2019 Fiscal Year Research-status Report
mRNA翻訳の時空間的な制御が嗅神経細胞の形成や機能に果たす役割の解明
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19K07363
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
福田 七穂 新潟大学, 脳研究所, 講師 (00415283)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 転写後制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞では、樹状突起や軸索末端に特定のmRNAが局在化しており、局所的なタンパク質合成が行われる。この制御は、神経細胞が外部からの刺激に対して迅速かつ局所的に応じることを可能とし、シナプス形成や軸索伸長を担うことが明らかとなりつつある。嗅覚組織では、嗅球へ投射する嗅神経細胞の軸索末端において、特定のmRNAが局在化されていることが古くから知られるが、その機構や生理的役割は不明である。私達はこれまでに、mRNAの局在化を担うRNA結合タンパク質の一つ、Hnrnpabが嗅神経細胞に高発現することを見出した。また、その欠損マウスでは、嗅神経細胞の軸索形態の異常や細胞死が高頻度で生じることを発見した。本研究では、HnrnpabのターゲットmRNAの発現解析や、Hnrnpabもしくはその結合配列を欠損するマウスの表現型解析を行い、mRNAレベルでの遺伝子発現制御が嗅神経細胞の形成や維持、匂い受容に果たす役割を解明することを目的としている。 今年度は、RNA免疫沈降でHnrnpabとの結合が確認されたターゲットmRNAについて、その発現様式をmRNAレベルとタンパク質レベルとで解析した。その結果、Hnrnpabターゲットの数種は、mRNAの細胞内分布とタンパク質の細胞内分布とに顕著な違いを示し、mRNA翻訳が限局される発現制御を受けていることが示唆された。これらの分子について、Hnrnpab欠損マウスにおける発現様式を解析した結果、局所におけるタンパク質発現が約10%低下するものがみられた。しかし、発現様式の大きな破綻は見られなかったことから、これらmRNAの発現制御にはHnrnpab以外の分子も関与することが示唆された。そこで、2種のターゲットmRNAについて、Hnrnpabの結合配列を含む約1000bpの3'UTR配列を欠損させた遺伝子改変マウスを作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA免疫沈降においてHnrnpabとの結合がみられたmRNAの発現解析を、mRNAレベルとタンパク質レベルとで行い、ターゲットmRNAを絞り込むことができた。また、CRISPR/Cas9システムを利用して、Hnrnpabの結合領域を含む約1000bpの3'UTR配列を欠損させた遺伝子改変マウスを作出し、系統を樹立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作製した3'UTR欠損マウスの表現型解析(mRNAおよびタンパク質の発現様式の解析、嗅覚組織の形態学的な解析)を進める。また、Hnrnpab欠損マウスの行動解析を行い、Hnrnpabの欠損が匂い受容へ与える影響を検定する。
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Causes of Carryover |
CRISPR/Cas9による遺伝子改変マウスの作出において、想定よりも高効率で変異体が得られたため、予算に余剰が生じた。本予算は、次年度の遺伝子改変マウスの飼育維持、表現型解析に用いる。計画では、高感度RNA検出試薬について必要最低限を計上していたが、本変更によって複数種のmRNAについて高感度RNA検出試薬で解析できるようになり、多角的に評価することが可能となる。
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