2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of locus-specific single cell analysis of chromatin modifications in tissue
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19K07372
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
西山 晃 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (80589664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エピゲノム / ヒストン修飾 / ゲノム機能領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度に引き続き、マウス脾臓組織と細胞株でエピゲノム解析、遺伝子発現解析を行なった。昨年度は骨髄由来の血球前駆細胞をフローサイトメーターでソーティングすることで、血球幹前駆細胞を分離して解析に用いた。これによって、血球分化の各系譜における幹前駆細胞から成熟細胞に至る各分化段階でのサンプルを得ることができた。エピゲノム解析としては、遠位エンハンサーや遺伝子の活性化マーカーであるアセチル化ヒストンH3K27(H3K27ac)に対する抗体を用いて、本研究室で樹立した細胞株ならびにマウス脾臓から分離した血球成熟細胞、骨髄から分離した血球幹前駆細胞からクロマチンを調整して、クロマチン免疫沈降-シーケンス法を行った。これによって、ゲノムワイドでH3K27acの分布を評価した。さらに昨年度はオープンクロマチンをゲノムワイドに解析できるATAC-seqも行った。遺伝子発現については、分離した細胞からRNAを抽出し、whole transcript amplificationを行うことで、微量サンプルからでも十分な質のRNA-seqを可能にした。これによって、血球幹前駆細胞から成熟細胞に至る各分化段階でのエピゲノムとトランスクリトームのランドスケープのダイナミクスを解析できる準備ができつつある。特にヒストン修飾とオープンクロマチンとを組み合わせることで、組織特異性の高いエンハンサー領域を抽出できると考えている。これらのデータに関しては、最新のバイオインフォマティクスの解析技術を取り入れることで、精度の高いデータを得ることを目指す。また、得られたデータから本研究課題で解析すべきゲノム領域を選択していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、マウス脾臓組織と本研究室で樹立した細胞株二種類で、アセチル化ヒストンH3K27のクロマチン免疫沈降-シーケンス法によるエピゲノム解析を行った。今年度は、対象組織としてマウス骨髄由来の各分化段階の血球幹前駆細胞を加え、さらに解析方法として、オープンクロマチンをゲノムワイドに解析できるATAC-seq法と微量サンプルから遺伝子発現を可能にする微量RNA-seq法を加えた。エピゲノム解析の目的は、解析対象とするゲノム領域を十分に解析することで確実に本計画を遂行するためであり、条件としては、血球成熟細胞や細胞株で特異的に発現する遺伝子の近傍に存在して、十分にヒストン修飾のレベルが高いエンハンサーを選択することである。昨年度の解析である程度は候補ゲノム領域を絞ることができたが、ヒストン修飾のレベルが概ね低いという問題が生じた。エピゲノム解析のうち、ヒストン修飾の解析はクロマチン免疫沈降法で行なっているがゲノムワイドの解析では特異性の高い箇所はヒストン修飾のレベルが低かった。ヒストン修飾のレベルが高く、かつ組織特異性の高い箇所も存在するが、いわゆるスーパーエンハンサー領域となってしまい、広大な領域でヒストン修飾が見られ、本研究の目的と照らし合わせて考えると、ゲノム座標の面で特異性が低くなることが予想された。このエピゲノム解析については今後も継続していく。また、これまで従来型のCas9の変異体(dCas9)を使用していたが、恒常的発現による非特異的なゲノム結合を防ぐために、改良版Cas9由来のdCas9変異体を用いて実験系を組み立てを行う。
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Strategy for Future Research Activity |
令和三年度は、検出頻度の評価と、解像度の評価を行う。解析対象となるゲノム領域については、昨年度に引き続きエピゲノム・遺伝子発現解析を継続して、十分に評価できる領域を選択する。検出頻度の評価については、ゲノム全体に遍在するヒストンH3に対する抗体と抗Cas9抗体を用いてPLA法を行う。重ねてdCas9の免疫染色を行い、dCas9発現細胞中でのPLAシグナル陽性細胞の割合を算出して検出頻度を評価する。解像度については、解析対象のクロマチンとgRNA設計部位との距離について評価を行う。解析対象のクロマチンについては、活性化エンハンサー部位を対象にして解析を行う予定である。このゲノム領域についてはアセチル化ヒストンH3K27のレベルが高く、また周囲に同じヒストン修飾がない領域を選択する。アセチル化ヒストンH3K27に対する抗体と抗Cas9抗体を用いてPLA法を行い、得られた結果からクロマチンが検出可能なDNA上の距離(塩基数)を算出して解像度を評価する。 さらに、dCas9非発現細胞を用いて、リコンビナントdCas9とgRNAを細胞外から導入する方法を樹立する。まずは実験条件の最適化のため、固定や膜透過処理が容易な細胞株を使用する。リコンビナントdCas9は予めgRNAと複合体を形成させておく。次に細胞に一次固定と膜透過処理を施し、dCas9-gRNA複合体を添加する。さらに二次固定を行い、PLA法によりクロマチンの検出を行う。このdCas9導入方法が確立された後で、組織切片での解析に移行する。組織切片の作成は所属研究室で可能であるが、固定方法については、固定剤の種類、濃度を調整して、条件の最適化を行う必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
当初の計画と比較して、実施した研究の中でバイオインフォマティクスを用いたエピゲノム解析、遺伝子発現解析の割合がかなり多くなった。このエピゲノム解析に使用したデータは、本研究室で取得されたデータ、公開データベースに登録されているデータなどを用いた。前者に関しては、本研究代表者が元来の研究に関わっており、また取得データを用いる論文に研究代表者が著者となって加わっている。このエピゲノム解析に使用した解析サーバーなどの機器も、既に研究室に備わっているので、エピゲノム解析に使用する設備品費が発生しなかった。上記の状況によって、次年度使用額が生じた。
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[Journal Article] Astrocytic phagocytosis is a compensatory mechanism for microglial dysfunction2020
Author(s)
Konishi Hiroyuki、Okamoto Takayuki、Hara Yuichiro、Komine Okiru、Tamada Hiromi、Maeda Mitsuyo、Osako Fumika、Kobayashi Masaaki、Nishiyama Akira、Kataoka Yosky、Takai Toshiyuki、Udagawa Nobuyuki、Jung Steffen、Ozato Keiko、Tamura Tomohiko、Tsuda Makoto、Yamanaka Koji、Ogi Tomoo、Sato Katsuaki、Kiyama Hiroshi
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Journal Title
The EMBO Journal
Volume: 39
Pages: e104464
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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