2019 Fiscal Year Research-status Report
リンチ症候群発症機序の解明と創薬に向けたDNAミスマッチ修復蛋白質の構造機能解析
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19K07376
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
福井 健二 大阪医科大学, 医学部, 助教 (00466038)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | DNAミスマッチ修復 / リンチ症候群 / X線結晶構造解析 / MutL / PMS2 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA ミスマッチ修復系で機能する MutL タンパク質の構造機能解析を行った。まず、モデル分子として用いた超好熱菌由来 MutL の ATPase ドメインの結晶構造を、AMPPCP および ADP との複合体として、それぞれ 1.73 および 1.69 Å分解能で決定した。この構造情報をもとに、ヒト MutL ホモログである PMS2 におけるリンチ症候群関連変異の機能的意義の評価を行った。リンチ症候群疑いの症例で報告された 5 つの機能的意義不明変異 (variants of uncertain significance, VUS)について、対応する変異をモデル分子である超好熱菌由来 MutL に導入し、タンパク質構造の安定性、ATPase 活性、DNA 結合能を測定した。5 つのうち 2 種類の変異では、熱や変性剤、またはプロテアーゼに対する耐性が低下しており、タンパク質構造の不安定化が認められた。残り 3 つのうち 2 種類についてはタンパク質構造の不安定化は見られなかったものの、DNA 結合能の低下を認めた。モデル分子において機能への影響が認められた変異について、ヒト由来 MutL ホモログ PMS2 に導入し、モデル分子と同様の影響が生じることを確認した。よって、今回評価した 5 つの VUS のうち 4 つについては、病原性を示す変異であることが示唆された。これらの結果は、リンチ症候群の遺伝子診断において有益な情報となる可能性が有る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶構造を、想定よりも早く解くことができたため、機能解析に取り掛かる時期が早まった。しかしながら、ヒト由来 PMS2 タンパク質の調製が困難で想定よりも時間がかかったため、結果として計画通りの進行状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、ヒト由来 PMS2 タンパク質の構造機能解析と VUS の意義の同定を進める。具体的には、これまで明らかにされていない ATPase 活性とエンドヌクレアーゼ活性の触媒メカニズムを同定することで、関連残基に見られる VUS の意義の同定を促進することとする。触媒メカニズムの同定には、活性の pH 依存性や温度依存性等の測定が有用であるため、広範囲の pH や温度に対して安定性を示す超好熱菌由来 MutL を適宜モデル分子として利用する。
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Causes of Carryover |
ヒト由来 PMS2 タンパク質の調製に、想定よりも若干の遅れがあったため、タンパク質精製に使用する消耗品費に若干の差異が生じた。次年度に後れを取り戻す予定であり、当該助成金を使用する。
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