2020 Fiscal Year Research-status Report
精巣ライディッヒ細胞における胎仔期分化記憶保持の分子基盤解明
Project/Area Number |
19K07378
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
嶋 雄一 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80425420)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ライディッヒ細胞 / 精巣 / 男性ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
胎仔ライディッヒ細胞の分化記憶は、クロマチン構造として核内に保持されていると予想される。そのため、遺伝子発現解析のみならず、クロマチン構造の解析も必要であると考えられる。今年度までに、胎仔ライディッヒ細胞と成獣ライディッヒ細胞における遺伝子発現およびオープンクロマチン領域をそれぞれ細胞集団として(bulkで)解析を行なった。しかし、近年の解析技術の発展を踏まえ、今後は単一細胞で遺伝子発現とクロマチン構造を同時に解析するsingle cell multiome解析を実施する必要性がある。現在、核の調製やトランスポゾン感染などの実験条件を決定するため、予備実験を進めている。 近年の研究から、胎仔期と思春期以外にも、新生仔期に一過性の男性ホルモン産生が上昇することが知られており、この時期はmini-pubertyと呼ばれている。mini-pubertyは将来の精子形成や外生殖器の発達、性行動の成熟などに重要であることが知られている。一方、mini-pubertyは胎仔ライディッヒ細胞が脱分化を経て成獣ライディッヒ細胞へ変換する時期に一致しており、胎仔ライディッヒ細胞の分化記憶にも関与する可能性がある。 我々が最近作出したNr5a1遺伝子の下垂体エンハンサーを欠失するマウスでは、胎仔ライディッヒ細胞の機能分化は正常であったが、mini-pubertyが消失していた。そこで、このマウスを用いて、今後、mini-pubertyと胎仔ライディッヒ細胞の分化記憶保持や将来の成獣ライディッヒ細胞の分化の関連を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子発現解析およびクロマチン構造解析は順調に進んでいるが、近年の実験技術の発展を踏まえ、より詳細な情報を得るために、新たに単一細胞解析を行うことにした。 研究開始当初は想定していなかったが、新たに作出したNr5a1遺伝子の下垂体エンハンサー欠失マウスを用いることで、mini-pubertyと胎仔ライディッヒ細胞の分化記憶の関連を明らかにできると考えられたため、このマウスの詳細な解析を新たに開始した。 上記のように、当初の計画の一部を変更してさらに発展させることができており、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
胎仔ライディッヒ細胞の分化記憶は、クロマチン構造として保持されると予想されるため、胎仔期と新生仔期の精巣を用いた単一細胞解析(遺伝子発現とクロマチン構造の同時解析)を行うことで、胎仔ライディッヒ細胞から成獣ライディッヒ細胞への変換における遺伝子発現とその調節機構の変化を明らかにする予定である。 また、新たに作出したNr5a1遺伝子の下垂体エンハンサー欠失マウスを用いることで、胎仔ライディッヒ細胞から成獣ライディッヒ細胞への変換におけるmini-pubertyの重要性を明らかにする予定である。この際、正常マウスの単一細胞解析の結果と、下垂体エンハンサー欠失マウスの精巣を用いた単一細胞解析の結果を比較することで、より詳細な情報を得ることが可能である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの感染拡大の影響で、研究計画の進捗に遅延が生じた。その分生じた研究費を、次年度の単一細胞解析の費用の一部として活用する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Book] 小児泌尿器科学2021
Author(s)
日本小児泌尿器科学会
Total Pages
368
Publisher
診断と治療社
ISBN
978-4-7878-2422-6
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