2021 Fiscal Year Annual Research Report
ペルオキシソーム欠損症における代謝異常と病態発症機構
Project/Area Number |
19K07386
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 雄一 九州大学, 基幹教育院, 学術研究員 (00529092)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペルオキシソーム / BDNF / 中枢神経系障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペルオキシソーム形成に機能するペルオキシン遺伝子・Pexの欠損は、脳中枢神経系において重度の障害を呈するペルオキシソーム形成異常症を発症させる。研究代表者らは、これまでにペルオキシソーム形成異常症モデルマウス・Pex14変異マウスを作製し、小脳における形態異常が脳由来神経栄養因子・BDNFの発現増加およびその受容体・TrkBの不活性型の増加に起因することを示している。 研究の最終年度であった2021年度、研究代表者はPex14変異マウスに対して、soluble epoxide hydrolase (sEH)の阻害剤を処置したが、脳の形態形成などへの影響は認められず、脂質メディエーターとの関連性を明らかにすることはできなかった。一方で、韓国ソウル大学との共同研究により、Heimler症候群患者の病因遺伝子がPEX26であることを明らかにした。患者はPEX26L169Pの変異を有しており、Pex26欠損CHO変異細胞を用いた解析から、PEX26L169Pは軽い温度感受性を示し、高温においてカタラーゼの輸送障害を呈することを見出した。 研究期間全体を通しては、ペルオキシソーム欠損グリア細胞におけるBDNFの発現増加はサイトゾル局在性カタラーゼによるサイトゾルの還元化が原因であることを示した(J. Biol. Chem (2020) 295, 5321-5334)。また、成体マウスにおけるペルオキシソーム機能を検証するため、タモキシフェン誘導性Pex2コンディショナルノックアウトマウスを作出し、タモキシフェン投与後のペルオキシソーム形成障害誘発により記憶障害を呈し、記憶に関わる海馬神経幹細胞の減少、BDNFおよびTrkB-T1の発現増加を見出した(Front. Cell Dev. Biol. (2020), 8, 567017)。 以上のように、ペルオキシソーム形成異常を原因とする病態発症の分子基盤の全容解明に向けた研究に多大なる貢献となったと確信している。
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Research Products
(3 results)