2019 Fiscal Year Research-status Report
高解像度エピトープマッピングを駆使した分子標的薬の創成:眼内線維化の新規治療戦略
Project/Area Number |
19K07387
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中村 信介 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (80815613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 春彦 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (00324509)
原 英彰 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20381717)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 線維化 / 中和抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
滲出型加齢黄斑変性は、脈絡膜血管新生に伴う浮腫及び組織障害に加え、その病態進展の過程で形成される線維瘢痕が視力低下の一因と考えられている。しかし、眼内線維化を標的として治療法は存在しない。近年、組織の線維化において、上皮間葉移行 (Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT) が着目されているが、ヒト脈絡膜新生血管組織検体を用いた既報ではEMTを制御する転写因子の一つであるSnailがヒトCNV中の網膜色素上皮細胞に高発現し、線維化組織でその陽性率が高いことが明らかとなっている (Hirasawa M. et al., Molecular Vision 2011;17:1222-1230)。本研究は、線維化の関与が予想されるEGF受容体シグナルのリガンドの一つ (Protein X) に着目し、中和抗体を用いた新規治療薬の創成を目的としている。眼内線維化に関与する網膜色素上皮細胞由来細胞株にProtein Xを添加すると紡錘形の形態変化を認め、線維化マーカーであるfibronectinが増加した。則ち、Protein Xが網膜色素上皮細胞の線維化を顕著に促進させることが明らかになった。また、独自に作製した中和抗体の中から、特に親和性が高く有効性に期待が持てる抗体を3種類同定した。作製した抗体は既存抗体とは異なるエピトープを認識するもので新規性が高い。Protein Xが瘢痕形成の上流に位置することを証明できれば、Protein Xの阻害が線維化のpoint of no returnを越えない様に制御できる可能性が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、滲出型加齢黄斑変性の瘢痕形成の病変部位の一部と想定される網膜色素上皮細胞を用いた実験系で、Protein Xが線維化マーカーのfibronectinを過剰に発現させることを見出した。Protein Xの線維化促進作用は陽性対照群のTGFβ添加群と同等程度であった。加えて、Protein Xを標的にした新規中和抗体の作製に着手し、既存の中和抗体よりも親和性が強いことを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の検討により、滲出型加齢黄斑変性で生じる瘢痕形成の治療標的になり得るProtein Xの同定に成功した。今後、網膜色素上皮細胞に加え、線維化を来たす起源細胞の一つと予想されるペリサイトにも着目して、Protein Xの線維化促進作用とその作用機序について検討する。網膜色素上皮細胞及びペリサイトの両細胞で同様の作用が認められれば、治療標的として期待できる知見になる。
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Causes of Carryover |
令和2年度への繰越し金額は¥20,098。異なる研究で使用していた試薬を代用できたため。
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