2020 Fiscal Year Research-status Report
Role of Tspan18 in the intracellular trafficking of VEGF receptor
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19K07389
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田井 育江 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90749508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管新生 / Tetraspanin18 / shedding / Folliculin / VEGFR2 / リンパ管内皮 / 血管内皮 / 静脈内皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、sheddingによって生じるVEGFR2の75kDa断片とTspan18が直接的に結合することが明らかになった。また、ヒト静脈内皮細胞株HUVECにVEGFR2を強制発現すると、全長VEGFR2の増加の後75kDa断片の産生が増大し、続いて起こるsheddingのステップに速やかに進行することがわかった。 Tspan18を過剰発現させたHUVECでは、VEGF刺激後に認められた75kDa断片が増加しなかったことから、Tspan18はsheddingによる75kDa断片の生成過程に何らかの役割を持つことが示唆された。しかし、全身性および血管内皮細胞特異的にTspan18をノックアウトしたマウスの網膜を用いて血管新生が開始する生後2日目より継時的にshedding断片の量を調べたところ、Tspan18の有無による75kDa断片および130kDa断片の量に差異は認められなかった。従って、Tspan18によるVEGFR2のshedding調節および75kDa断片を介した機序は、生理的条件下、つまりTspan18ノックアウトによる網膜血管新生の遅延と動脈形成異常を説明するに至らなかった。同時期にin situ hybridizationやin silicoによるスクリーニングによって網膜の血管新生時期に血管に発現する新規分子をいくつか見出しており、同時に解析を進めてきた。そのうちの1つであるFolliculin(FLCN)について、血管特異的FLCNノックアウトマウスにおいて静脈およびリンパ管に構造的な異常が生じて早期に死に至ることが新たな知見として見出された。また、本来であれば生後はリンパ管内皮細胞以外で発現することのないリンパ管分化のマスターレギュレーターである転写因子Prox1が、一度完成された後の静脈内皮細胞で発現することが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、Tspan18によるVEGFR2のshedding調節および75kDa断片を介した機序による血管形成への生理的な重要性の意義の解明に至らなかったものの、血管内皮細胞で機能し得るいくつかの分子を見出していること、さらに、そのうちの1つである、多発性肺嚢胞、腎がん、線維毛包種などを典型的症状とするBirt-Hogg-Dubé(BHD)症候群の原因遺伝子として知られるFolliculinについて、血管とリンパ管が完成し終わった生後において、Flcnを血管内皮細胞特異的にノックアウトすると、生後は一切交わりあう事のない血管とリンパ管がところどころで接続し(異常吻合)、早期に死に至ることを見出した。また、生後では血管に発現することはないリンパ管分化スイッチを担う転写因子Prox1が、FLCNを欠損した静脈では異所性に発現していることを見出した。この発見は血管・リンパ管という体内の2つの酷似する循環系が、なぜ一切交通することなく、独立したネットワークを形成するのかという、生物学的な疑問を解き明かすという学術的重要性を持つと共に、将来的にはがんリンパ行性転移やリンパ浮腫などの病態解明、治療への応用につながるものと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
sheddingで生じるVEGFR2の切断断片である75kDa断片とTetraspanin18の結合および制御機構が、生理的な血管新生においてどのような意義を持つかの証明に至っていないものの、いくつかの血管新生に関わる新規分子を見出している。そのうちの1つである、“多発性肺嚢胞、腎がん、線維毛包種などを典型的症状とするBirt-Hogg-Dubé(BHD)症候群”の原因遺伝子として知られるfolliculin(Flcn)の血管内皮細胞特異的ノックアウトマウスを作成したところ、血管とリンパ管がところどころで接続し(異常吻合)致死となる表現型を見出した。この表現型は出生後のFlcn遺伝子欠失、つまり血管とリンパ管が完全に分離した出生後にFlcnを欠失させた場合でも、同様に異常吻合が起きることを見出した。 また、血管内皮細胞でFlcnが欠失すると、生後ではリンパ管内皮細胞でしか発現しないはずの転写因子 Prox1が静脈内皮細胞で発現し、リンパ管に類似した『リンパ管もどき静脈内皮細胞』となって、このような異常な細胞が生じた血管はリンパ管を接続すべき対象と認識してしまうことを想定して解析を進める。今後は、この研究成果を基盤として、血管・リンパ管機能や構造の維持全体からみた、Flcnシグナルの全容とその意義の解明に取り組む予定である。
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