2020 Fiscal Year Research-status Report
呼吸鎖複合体I由来NAD+を介した代謝-増殖共役機構の解明と新規がん治療への応用
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19K07390
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 講師 (60349040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴沼 質子 昭和大学, 薬学部, 教授 (60245876)
石川 文博 昭和大学, 薬学部, 講師 (60515667)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミトコンドリア電子伝達系 / エネルギー代謝 / サイクリン依存性キナーゼ阻害因子p21Cip1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、癌細胞における呼吸鎖機能と増殖能を共役させる増殖制御機構として、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体I酵素 (NADH:ユビキノン還元酵素) から供給されるNAD+により制御されるエネルギー代謝-細胞増殖共役機構の解明に取り組む。本年度は、以下の点を明らかにした。 1. p21Cip1転写活性化に関する解析: p21Cip1の転写活性化について、転写活性化に必要な転写開始点近傍の領域を特定した。様々な代謝経路に関わるNAD+は、ヒストンやDNAの修飾酵素の基質となっていることから、その変動はエピジェネティックな遺伝子発現制御に関わる可能性がある。そこで、この領域についてヒストンの修飾変化について検討した。その結果、特定した領域ではH3K9、H3K4Me3が増加していた。 2. NAD+およびその関連分子に関する解析:ヒストンの修飾状態が変化していたことから、ヒストンのアセチル化およびメチル化修飾に関わる候補分子を探索するため、それらの活性化剤および阻害剤を用いた検討を行った。その結果、複合体Iの抑制によるp21Cip1の誘導は、SIRT6活性化剤存在下でp21Cip1が誘導されなくなった。 これらの結果から、本機構によるp21Cip1の転写活性化には、SIRT6がH3K9を脱アセチル化してp21Cip1を抑制する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
転写制御に関する解析を中心に行い、複合体Iの抑制によりヒストン修飾状態が変化してp21Cip1の転写が変化する可能性を見出した。さらに関与する候補分子としてSIRT6を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
候補分子として見出したSIRT6の関与を中心に解析を進める予定である。 解析に必要となるSIRT6のshRNAや活性測定などを準備できたので、本課題で取り組むエネルギー代謝-細胞増殖共役機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたキットの購入費が少なく、また学会がオンライン開催となったため、旅費が不要になった。これらの理由で、次年度使用額が生じた。
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