2021 Fiscal Year Research-status Report
サルコペニア病態におけるサテライト細胞の加齢性変化の寄与
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19K07396
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松崎 京子 (有本京子) 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (90568932)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サルコペニア / サテライト細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルコペニアは加齢に伴って生じる骨格筋量、及び骨格筋力の低下を言い、サルコペニアに陥ると、歩行速度の遅延や、杖や手すりが必要になるなど、身体機能が著しく低下する。 健康寿命の延伸のためにはサルコペニアの積極的な治療が必要不可欠であるが、現在までに効果的な治療薬は開発されていない。その一つの原因として、サルコペニアの病態機構には未だ不明な点が多く残されていることが考えられる。そこで本研究では、サルコペニアの病態機構を明らかにすることを目的とし、特に骨格筋組織幹細胞=サテライト細胞の加齢性変化に着目する。 前年度までに、作製した老化モデルマウスの基礎解析を行い、下肢骨格筋において筋萎縮が観察されることを確認した。さらに、老化モデルマウス及び野生型マウスからサテライト細胞を単離し、細胞数や増殖能、分化能の比較を行った。また、RNA seqの手法を用いて老化モデルマウス、野生型マウス、それぞれから単離したサテライト細胞における遺伝子発現を網羅的に解析、比較した。網羅解析の結果、ある特定のシグナル分子の発現が、老化モデルマウス由来のサテライト細胞において顕著に低下することがわかった。今年度は、この分子の発現低下が、生理的老化マウス由来のサテライト細胞でも観察されることを確認した。また、この分子の発現低下が老化モデルマウス、及び生理的老化マウス由来のサテライト細胞の増殖能、自己複製能の低下を引き起こすことを見出し、それらの細胞に当該分子を過剰発現させることで、増殖能及び自己複製能の回復が見られることを示した。さらにこのシグナル分子発現低下の分子機構の詳細を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、当初サテライト細胞への機械刺激の影響を解析する予定であった。 しかしながら、RNA seqによる遺伝子発現網羅解析から、老化モデルマウス及び生理的老化マウス由来のサテライト細胞において顕著に発現レベルが低下するシグナル分子が同定された。そこで、研究計画を修正し、同定されたシグナル分子の発現低下がサテライト細胞の加齢性変化にどのように寄与するのか、さらに当該シグナル分子の発現低下の分子機構の詳細を解析することとした。 本年度は、当該分子を老化サテライト細胞に入れ戻すことでその効果を検証することができ、本研究計画の目的である[サテライト細胞の加齢性変化のサルコペニア病態へ寄与の解明]の一端を達成できたと言えるが、コロナ禍の影響で実験動物を用いた研究などが一時的に中断した結果、シグナル分子の発現低下機構解析の完遂には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験から、老化モデルマウス及び生理的老化マウスから単離したサテライト細胞では、ある特定のシグナル分子の発現が顕著に低下しており、そのことがサテライト細胞の増殖能、自己複製能の低下に寄与することが示唆された。 さらに、シグナル分子の発現低下は転写レベルで生じていることも示唆された。 そこで、今後はChIP assayを用いて当該シグナル分子をコードする遺伝子の発現を制御する転写因子の同定するとともに、加齢に伴い発現低下を起こす分子機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、主に動物を用いた実験の中断期間があったため、当初予定していた実験が完遂できず次年度に引き続き研究を継続することとなった。 研究費用は、研究遂行のための消耗品の購入、及び動物実験に関連する費用として用いる予定である。
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