2019 Fiscal Year Research-status Report
Possible involvement of intratumoral androgens in breast cancer immune microenvironment
Project/Area Number |
19K07410
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 清司 東北大学, 医学系研究科, 講師 (80595562)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 乳癌 / リンパ球 / アンドロゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の実施状況の概略は以下のとおりである。 1.ヒト乳癌組織約100例を用いてアンドロゲン受容体(AR)とリンパ球マーカー(CD3、CD4、CD8)の免疫染色を行い、ARの発現とリンパ球浸潤を評価したところ、ARの発現とリンパ球浸潤の間に負の相関が認められた。これはアンドロゲンがARを介して乳癌細胞に作用し、その結果として免疫微小環境が変化した可能性を示しており、当初の仮説を指示する結果が得られたと考えている。今後、臨床検体を用いてアンドロゲン合成酵素の免疫染色や細胞傷害活性マーカー(パーフォリン、グランザイムb等)の免疫染色を追加し、さらに詳細な解析を進めていく予定である。 2.現在、ARおよびアンドロゲン合成酵素(Akr1c6)を安定発現するマウス乳癌培養細胞(4T1)の樹立を行っている。ウェスタンブロットによる発現確認の結果、AR安定発現細胞およびAkr1c6安定発現細胞の樹立には成功したと思われるが、両者を共に発現する細胞の樹立には至っていない。バイシストロニック発現ベクターを用いるなど、発現ベクターの構築を再検討する必要があると考えられる。 3.また、マウスを用いた同種移植モデルの構築に向け、細胞の接種条件の検討も進めている。乳癌細胞を単独で接種しても免疫細胞を含む間質細胞の浸潤が乏しいことが予想されるため、乳癌細胞とともに接種して間質の介在を促す細胞外基質の検証を行っている。コラーゲン様リコンビナントペプチドが間質細胞の介在を促す可能性が示唆されたため、今後は条件の最適化(スフェロイド培養条件、コラーゲン様ペプチドの濃度など)を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年次に予定していたヒト乳癌培養細胞とヒトリンパ球培養細胞を用いた遊走能試験の条件設定に苦慮したため、2年次に予定していた担癌マウスモデルの実験の準備、ならびに3年次に予定していたヒト乳癌組織を用いた病理組織学的解析を先行させた。そのため、全体的な進捗状況はまずまずで、抜本的な研究計画の見直しが必要な遅滞はないと考える。担癌マウスの実験の準備は概ね順調に進んでおり、今年度の早い時期に接種実験に着手できると思われる。ヒト乳癌組織を用いた病理組織学的解析については、ARおよびリンパ球マーカーの染色、評価が終了しており、仮説に合致した結果が得られつつある。アンドロゲン合成酵素や細胞傷害活性を反映するマーカー(パーフォリン、グランザイムb等)の抗体の準備も進んでおり、今年度中に解析まで進めることができると予想している。 ヒト乳癌細胞とリンパ球の共培養実験に関し、研究計画調書に記載したような浸潤したリンパ球の細胞数を計測する手法は現実的でないことが分かったため、リンパ球に蛍光蛋白や生物発光蛋白を安定発現させ、蛍光強度や生物発光強度を測定することでリンパ球の遊走を評価することができないか検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、1年次に予定していたヒト乳癌培養細胞とリンパ球細胞の共培養による遊走能試験の最適化を最優先に行う。蛍光蛋白(GFP)もしくは生物発光蛋白(ルシフェラーゼ)を安定発現させるプラスミドを構築し、これらをリンパ球に導入・安定発現させることで遊走したリンパ球を評価することが可能かどうか検証していく。リンパ球への遺伝子導入は一般に難しいと認識されているため、ウイルスベクターの使用も視野に入れつつ準備をしていく予定である。 担癌マウスモデルに関し、AR、Akr1c6、それら両方を安定発現するマウス乳癌細胞の樹立を早急に行うとともに、リコンビナントコラーゲン様ペプチドの最適化を行う。現在のところ、in vitroでマウス乳癌細胞をコラーゲン様ペプチド存在下で培養してスフェロイドを形成させ、それをマウスに接種する方法が最も効果的と考えられ、コラーゲン様ペプチドの濃度の最適化が最も重要と考えられる。 in vitroおよび担癌マウスの進捗状況にもよるが、現在のところ今年度もヒト乳癌組織を用いた病理組織学的解析を前倒しで行う予定である。パーフォリンおよびグランザイムbの免疫染色に関し、抗体の準備は今年度の早期に完了する見込みであり、未染標本の準備を適宜進めていく。
|
Causes of Carryover |
110円の次年度使用額が生じた。理由として、1年次に予定していたヒト乳癌培養細胞とリンパ球を用いた遊走能試験に遅れが生じた一方で3年次に予定していた免疫染色の実験を先行させたことが挙げられる。
|
Research Products
(17 results)