2020 Fiscal Year Research-status Report
Possible involvement of intratumoral androgens in breast cancer immune microenvironment
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19K07410
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 清司 東北大学, 医学系研究科, 講師 (80595562)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳癌 / アンドロゲン / リンパ球 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究2年次の研究実績は下記の如くである。 1年次に予定していたアンドロゲン受容体(AR)およびアンドロゲン合成酵素(Akr1c6)を安定発現する細胞の樹立が遅れていたが、プラスミドのトランスフェクションの後の薬剤選択のプロトコールを再検討することにより安定発現の樹立に成功した。一方、マウスの副腎ではヒトと異なりアンドロステンジオン(Akr1c6の基質となる低活性副腎アンドロゲン)の合成がほとんど見られないことが分かり、移植した腫瘍組織へのアンドロステンジオンの供給方法について検討を始めた。現在のところ、市販されている徐放性ペレットを用いた方法がもっとも簡便かつ再現性が高く有用な方法と考えている。 マウスへの移植に先立ち、細胞をマウスに移植した際のリンパ球の浸潤を促すためのコラーゲン様リコンビナントペプチドの条件検討を開始した。リコンビナントコラーゲンペプチドとマウス乳癌細胞を種々の割合で混合して低接着環境で培養し、リコンビナントコラーゲンペプチドを足場とする腫瘍のスフェロイド形成能を評価し、最適な割合を検討した。in vitroでの最適割合の算出は概ね終了したが、リコンビナントコラーゲンペプチドは粒子径が大きいためマウスへの接種が細胞のみの時と同じようにはいかずニードルの径を検討する必要に迫られた。実際のマウス移植実験は新型コロナウイルス感染症の感染拡大による所属機関BCPの上昇によって長期間の中断を迫られ、やや遅滞している。加えて次年度は共同動物実験施設の改修による実験スペースの縮小が求められており、動物実験の予定通りの遂行が困難になることが予想される。その際はヒト組織を用いた病理組織学的検討を充実させていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ARおよびAkr1c6安定発現細胞の樹立には成功したものの、アンドロステンジオンの外部からの供給方法について検討しなくてはならず、細胞移植実験にすぐに移行することができなかった。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う機関BCPの引き上げによって実験に従事する大学院生の登校・滞在時間が制限されたため、動物実験の遂行に遅れが生じた。次年度も学生の登校制限が発生するBCPレベルが当面続くこと、所属機関所有の動物実験施設の改修工事が年度末より始まったことから動物実験の遂行に遅れが生じることが予想される。必要に応じて、動物実験に代えて少人数で遂行可能なヒト乳癌組織を用いた免疫組織化学的検討を多角的に実施していく必要があると考える。具体的には、リンパ球の遊走・浸潤を調節する液性因子(サイトカイン、ケモカインおよびそれらの受容体など)がアンドロゲンによってどのように制御されるかを検討していきたい。これらの液性因子とARの発現の関連性を、乳癌組織を用いた免疫組織化学的検討により検討していくことを考えている。また、アンドロゲンによる液性因子の発現制御についても、培養細胞を用いて検討を進めていく(定量PCR法、ウェスタンブロット法など)。BCPが引き下げられて動物実験が可能になった場合に速やかに対応できるよう、リコンビナントコラーゲンペプチドを用いた細胞接種の条件の最適化も同時に進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた動物実験の遂行が困難になることが予想されるため、ヒト乳癌病理組織検体を用いた実験を拡充させる方針に舵を切ることを考えている。そのための予備実験として、乳癌培養細胞にアンドロゲンを添加し、リンパ球の遊走の制御に関わると報告されている既知の液性因子(ケモカイン、サイトカイン)の発現を定量PCR法にて検証する。有意な発現変動を示した液性因子に関し、乳癌病理組織検体を用いて免疫染色を施行し、ARおよびアンドロゲン合成酵素との相関関係、リンパ球浸潤(CD4、CD8)を精査する。 新型コロナウイルス感染症の動向が落ち着き次第直ちに動物実験に移行できるよう、予備検討を適宜進めていく。具体的には、アンドロステンジオン徐放性ペレットの準備、リコンビナントコラーゲンペプチドの接種条件の検討である。リコンビナントコラーゲンペプチドに関しては、あらかじめin vitroで乳癌細胞と共培養して形成させたスフェアの移植という方法も念頭において進めていく。 3年次に予定していた実験「実際のヒト乳癌組織を用いたアンドロゲンと抗腫瘍免疫活性の関連および臨床病理学的意義の解析」は予定通り進めていく。抗腫瘍免疫活性の指標としてはパーフォリンやグランザイムb陽性免疫細胞の浸潤を想定している。組織中DHT濃度の測定のための乳癌凍結検体の収集が最終年度内に十分進まないことも予想されるため、組織中アンドロゲン濃度の測定に代えてアンドロゲン合成酵素の発現を検討していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う所属機関BCPレベルの引き上げにより実験への従事が大幅に制限され、主に動物実験に係る消耗品代に余剰が発生した。感染状況が落ち着き次第、遅れた分の実験を2021年度に実施するため、昨年度の余剰を繰り越す。また、引き続きBCPレベルが高いまま推移することが予想される場合は、動物実験に代えて少人数で実施可能なヒト乳癌組織を用いた病理組織学的検討に舵を切ることも考えられるため、病理組織標本作製に係る経費に昨年度の余剰の一部を充当する。
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Research Products
(16 results)