2021 Fiscal Year Research-status Report
蛍光ナノイメージング法による肺癌免疫微小環境の特徴化: 個別化免疫療法を目指して
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19K07426
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
稲村 健太郎 公益財団法人がん研究会, がん研究所 病理部, 主任研究員 (40442545)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺がん / 微小環境 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 免疫療法 / 個別化医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が有望な肺癌治療薬として台頭してきたが、治療感受性を正確に予測することは難しい。2018年、腸内細菌がICI感受性と密接に関係することを示した3つの論文がScience誌に同時掲載された。ICIの効果を増強させる腸内細菌は肺癌など、腸管と離れた遠隔臓器のがん免疫微小環境においても抗がんT細胞性免疫を亢進させることで免疫療法薬の効果を増強していた。これらの研究により明らかになったICI感受性と関連する免疫微小環境についての知見を深めるとともに、執筆した総説がSemin Cancer Biol誌に掲載された。従来のICIはT細胞性免疫を亢進させることで抗がん効果を発揮している。2020年1月に、がん免疫微小環境におけるB細胞と三次リンパ様構造がICIの効果を増強させることを示した3つ論文がNature誌に同時掲載された。これらの研究により明らかになった免疫微小環境の特徴を腸内細菌の観点から概説した総説がSemin Cancer Biol誌に掲載された。 がん微小環境はがん細胞・免疫細胞間だけでなく、種々の免疫細胞間の複雑な相互作用によって形成される。ICIに感受性をもつ肺癌の免疫微小環境を特徴化するために、まずは免疫細胞、免疫関連分子による肺癌のプロファイル化に取り組んでいる。組織マイクロアレイをもちいて種々の免疫関連分子を免疫染色し、各種免疫細胞の腫瘍内浸潤密度を定量した。免疫細胞によるプロファイル化により、肺腺癌は免疫細胞の腫瘍内浸潤という観点からもheterogeneousな集団であるというpreliminary resultsが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・新型コロナウィルス感染症の感染拡大が深刻化したことを受け、当初の予定通りに実験を遂行できなかった。よって、進捗状況は遅れていると判断した。しかしながら、実験の遂行が困難な状況下でも先行研究の文献調査により、免疫チェックポイント阻害薬感受性に影響をおよぼす腫瘍免疫微小環境についての知見を深めるとともに、執筆した2本の総説がSemin Cancer Biol誌に掲載された(Inamura K. Roles of microbiota in response to cancer immunotherapy. Seminars in Cancer Biology. 2020. doi: 10.1016/j.semcancer.2019.12.026; Inamura K. Gut microbiota contributes towards immunomodulation against cancer: New frontiers in precision cancer therapeutics. Seminars in Cancer Biology. 2021. doi: 10.1016/j.semcancer.2020.06.006)。本研究では免疫チェックポイント阻害薬に対する感受性を検討対象としているが、細胞障害性化学療法は肺癌の主たる治療法のひとつである。早期肺癌における術後化学療法効果の有効性を検討した米国大規模臨床研究について、患者の層別化に新たな病理学的情報を組み込む有用性を論じたCommentがJAMA Oncology誌に掲載された(Inamura K. Adjuvant Chemotherapy in Patients With Early-Stage Non-Small Cell Lung Cancer. JAMA Oncology. 2021. doi: 10.1001/jamaoncol.2020.8189)。 ・がん微小環境はがん細胞・免疫細胞間だけでなく、種々の免疫細胞間の複雑な相互作用によって形成される。免疫チェックポイント阻害薬に感受性をもつ肺癌の免疫微小環境を特徴化するために、まずは手術検体の組織マイクロアレイを用いて、免疫細胞、免疫関連分子による限局性肺癌のプロファイル化に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
・免疫チェックポイント阻害薬に感受性をもつ肺癌の免疫微小環境を特徴化するために、まずは免疫細胞・免疫関連分子によって限局性肺癌(手術検体300症例)をプロファイリングする。具体的には、組織マイクロアレイをもちいてCD45RO、CD3、CD4、CD8、FOXP3、PD-1、CD20などを免疫染色し、各種免疫細胞の腫瘍内浸潤密度を定量した。微小環境における免疫細胞の浸潤密度によって限局性肺癌の免疫微小環境のプロファイル化を進めている。肺腺癌は免疫細胞の腫瘍内浸潤という観点からもheterogeneousな集団であるというpreliminary resultsが得られた。 ・進行性肺癌(生検検体)の免疫微小環境をプロファイル化するための症例選択および臨床病理データベースの構築は完了した。手術検体による検討で得られたアルゴリズムを用いて、進行性肺癌の免疫微小環境をプロファイル化する。PD-1/PD-L1阻害薬感受性情報を加えた統合解析により、治療感受性肺癌に特徴的な免疫微小環境プロファイルを同定するとともに、感受性予測マーカーを探索する。
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Causes of Carryover |
(状況)新型コロナウィルス感染症の感染拡大が深刻化したことを受け、当初の予定通りに実験を遂行できなかった。 (使用計画)次年度の実験物品費・論文の英文校正費・論文掲載費・学会発表費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)