2021 Fiscal Year Annual Research Report
肺血栓塞栓症における血液凝固XI因子の作用と安全な抗凝固薬開発への展開
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19K07437
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山下 篤 宮崎大学, 医学部, 准教授 (90372797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古小路 英二 宮崎大学, 医学部, 講師 (00423723)
田島 卓也 宮崎大学, 医学部, 講師 (80549056)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Factor XI / venous thromboembolism / pathology |
Outline of Annual Research Achievements |
肺血栓塞栓症は、下肢や骨盤内の深部静脈に形成された血栓が遊離し、肺動脈を閉塞することで発症する疾患である。その重症度は血栓のサイズに依存するとされているが、静脈血栓の形成機序は不明な点が多い。また現在の抗血栓療法では出血性合併症が避けられず、安全な薬剤の開発が切望されている。申請者は血液凝固XI因子 (FXI) の欠損症は出血傾向が軽微であることに注目し、FXIが出血リスクの低い抗血栓薬の候補因子として研究を進めてきた。しかし肺血栓塞栓症の発症病態におけるFXIの役割は明確ではない。本研究では肺血栓塞栓症の病理標本、血液画像検査によって、血栓におけるFXIの局在や分布並びに、FXIの関与を明らかにすることを目的とした。 深部静脈血栓の吸引血栓標本から、血栓が様々な程度に器質化領域を有しており、段階的な血栓形成過程が示唆された。FXIは血栓に存在し、血小板、赤血球よりもフィブリンとの局在が一致しており、非器質化部分のFXI陽性面積率は器質化部分と比して高値を示した。生体外での血栓形成を可視化するフローチャンバーシステムで、FXIはトロンビン産生を促すことでフィブリン形成に関与していたが、壁在血栓のフィブリン形成への関与はFXよりも低いことが示唆された。フローチャンバーでの血小板凝集、好中球の付着への関与は否定的であった。以上のことより、FXIは静脈系血栓のより新鮮な部分に存在すること、トロンビン産生を介してフィブリン形成を促すこと、フィブリン形成への関与はFXよりも少ないことが示唆された。本研究成果はFXIを標的とした抗血栓薬の開発・適用に重要な情報を提供すると考えられる。なお、当初予定していた臨床研究は、新型コロナウイルス感染対策の入院患者受入制限等により実施が遅れたため、今後の課題としている。
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Research Products
(3 results)