2019 Fiscal Year Research-status Report
Specific mitochondrial electron transport chain processes involve oncogenesis of ovarian clear cell adenocarcinoma and can be targets of therapy
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19K07446
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山崎 一人 帝京大学, 医学部, 教授 (60302519)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 明細胞腺癌 / cystathionineγ-lyase / 低酸素ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は外科的切除を受けた124例の子宮体癌(116例の類内膜腺癌,4例の明細胞腺癌,4例の漿液性癌),68例の卵巣癌(14例の類内膜腺癌,63例の明細胞腺癌,1例の漿液性癌),10例の内膜症性嚢胞,8例の増殖期子宮内膜のホルマリン固定・パラフィン包埋組織から組織マイクロアレイを作成し,腫瘍,内膜症性嚢胞,および,正常子宮内膜におけるFOXJ1, cystathionineγ-lyase (CTH)の発現細胞の分布と発現様式を検証した.腫瘍細胞における発現の程度は5段階(P0~P4の順に高発現)に半定量的に評価し,正常子宮内膜と内膜症性嚢胞の上皮における発現との比較を行った. 結果としては,(1)内膜症性嚢胞上皮におけるCTHの発現細胞は比較的少数で,正常子宮内膜腺上皮と比較してやや上昇していたものの,両者に有意な差は見られなかった.(2)子宮体癌におけるCTH発現細胞は,類内膜腺癌(n=116)においてはP0: 2, P1: 19, P2: 79, P3: 46, P4: 1,明細胞腺癌(n=4)においてはP0: 0, P1: 0, P2: 0, P3: 1, P4: 3)で,明細胞腺癌は類内膜腺癌と比較してCTHの発現が有意に更新していることが明らかとなった.(3)卵巣癌におけるCTH発現細胞は,類内膜腺癌(n=14)においてはP0: 0, P1: 2, P2: 9, P3: 2, P4: 1,明細胞腺癌(n=63)においてはP0: 0, P1: 0, P2: 0, P3: 1, P4: 62)で,明細胞腺癌は類内膜腺癌と比較してCTHの発現が有意に更新していることが明らかとなり,卵巣明細胞腺癌が酸化的ストレスに耐性を有する上皮より発生するとする仮説を裏付ける結果と考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.既存人体資料を用いた観察研究 研究実績の概要に記載した通り,既存人体組織を用いた観察研究は順調に進捗している.研究観察においては仮説の通り,卵巣明細胞腺癌細胞は類内膜腺癌細胞と比較してCTHの発現が有意に更新していることが明らかとなった.このことは,明細胞腺癌がCTH/α-ケト酪酸活性の亢進した低酸素状態に耐性を有し,解糖系にATPを依存している明細胞腺癌がアスパラギン酸合成の際に必要な電子受容体としてα-ケト酪酸を用いている,とする仮説を裏付けるものであった.内膜症性嚢胞における癌前駆細胞の遺伝子・組織学的プロファイルに関しては現在検索中で,これらの内容については令和2年8月に開催される日本病理学会総会での発表を予定している. 2.培養細胞を用いたCTH発現抑制に関する実験 当初の計画ではsiRNAおよび,CRISPR cas9によるCTH発現抑制が明細胞腺癌,類内膜腺癌の低酸素応答に及ぼす影響を検索する予定であったが,令和元年に発注した細胞死,アポトーシス計測機器の納入が令和2年4月にずれ込んだため,進捗に遅延が生じている.CTHの発現を抑制するsiRNA, CRISPR cas9のシステムは既に入手しており,昨年度に購入した明細胞腺癌,類内膜腺癌の培養細胞への導入を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度から3年度にかけて,培養細胞を用いた実験で以下の項目の検証を推進する. (1) 明細胞腺癌細胞を低酸素条件下に培養し,低酸素ストレスに耐性であることを検証する.(2) siRNA, CRISPR cas9によるCTH発現抑制が明細胞腺癌の低酸素ストレス耐性を阻害することを検証する.(3) 明細胞腺癌におけるミトコンドリア呼吸鎖複合体を標的とした酸化的リン酸化阻害剤の抗腫瘍効果を検証する.(4) 明細胞腺癌の成育が主に活性化した解糖系に依存し,酸化的リン酸化に依存していないことを検証する.(5) 明細胞腺癌細胞の酸化的リン酸化阻害への耐性がCTHの活性に依存性であることを検証する.(6) アスパラギン酸を除いた培養液へのCTH阻害剤の添加,および,CTH発現抑制による抗腫瘍効果を比較検討し,低酸素耐性能がCTH活性とその基質であるアスパラギン酸の存在に依存することを検証する.(7) CTH阻害剤の添加,CTH発現抑制によってCTH活性,細胞増殖能の低下した明細胞腺癌細胞に,外因性電子受容体を添加することで増殖が回復するか否かを検証する.
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Causes of Carryover |
(次年度使用が生じた理由)令和元年度予算のうち,低酸素培養下における明細胞腺癌,類内膜腺癌の特性を調べるため11月に発注した細胞死,アポトーシス計測機器(Countess II, Applied biosystems)の納入が令和2年4月にずれ込み,支払いを持ち越した.また,これに伴って当初予定していたsiRNAおよび,CRISPR cas9によるCTH発現抑制が明細胞腺癌,類内膜腺癌の低酸素応答に及ぼす影響を検索する実験計画が遅れたこともあって残額が生じた. (使用計画)研究計画に則して課題の遂行を行う.また,研究課題の発表に関連した旅費,および,英文論文に関連した校正料,投稿料を予定している
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