2019 Fiscal Year Research-status Report
リンパ節CD169陽性マクロファージのがん免疫賦活機構解明による予後予測診断開発
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19K07459
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西東 洋一 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特別研究員(PD) (20783567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 紘二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特任准教授 (40613378)
藤原 章雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (70452886)
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (40449921)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マクロファージ / リンパ節 / がん免疫 / CD169 / PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
最初に、CD169-DTRマウスの施設内動物舎への導入と、必要な倫理委員会への申請・承認を完了した。ヘテロマウスの作製及びその掛け合わせによってリッターメイトマウス(WT/CD169-DTR)を作製し、ジフテリア毒素(DT)皮下投与後に免疫原性の高いマウス大腸癌細胞株MC-38の同部位皮下移植を行った。14日間の飼育観察後、腫瘍重量測定を行ったところ、CD169-DTRマウス群において有意に腫瘍重量が増加した。この結果は膵臓癌細胞株でも同様であった。次に、この腫瘍重量増加が宿主がん免疫の抑制によって起こっていることを確認するため、PD-L1抗体薬の早期1回投与を加えた実験計画を立案した。4群比較が必要で動物資源の有効利用を考慮し、リッターメイトではなくCD169-DTRマウスに対してPBS/DT投与を行うことで群分けし、さらにコントロール抗体/PD-L1抗体投与の2群に分配し、4群(PBS+コントロール抗体群, PBS+PD-L1抗体群, DT+コントロール抗体群, DT+PD-L1抗体群)の腫瘍増殖を解析した。結果、DT+コントロール抗体群がPBS+コントロール抗体群に対して有意な腫瘍重量増加を示した(再現性確認)。一方、PBS+PD-L1抗体群で大半の腫瘍が拒絶されているのに対して、DT+PD-L1抗体群では治療効果が消失し、DT+コントロール後退群と腫瘍重量に有意な差が生じなかった。これらの腫瘍の組織標本を作製し、腫瘍に浸潤するCD8陽性T細胞を免疫染色によって解析したところ、腫瘍重量が大きくなるにつれてCD8陽性T細胞の浸潤が減少している傾向を認めた。これらの結果から、所属リンパ節のCD169陽性マクロファージは宿主がん免疫の活性化とPD-L1抗体薬の効果発現に必須であるという知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の最大の目的である「担癌患者の所属リンパ節CD169陽性洞マクロファージがCD8陽性T細胞を介した抗腫瘍免疫を賦活し、PD-(L)1抗体薬の治療効果発現を決定づけていること」を解明する基盤データを単年度で取得することができた。腫瘍重量で決定的なアウトカムを取得しており、研究計画の主軸は確保できたといっても過言ではない。 これまでの解析の妥当性を補強するデータの取得と共に、今後の実験計画に向けてもスムーズに移行できている状態であり、上記評価が妥当であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス実験については、担癌状態の所属リンパ節でどのような細胞群の変化が起こっているのか、フローサイトメトリーを用いた解析を行うことで、CD169陽性マクロファージがCD8陽性T細胞を活性化することで起こる抗腫瘍免疫の詳細なメカニズム解明に挑む。また、今年度の実験モデルを利用し、使用する細胞株種と抗体薬(免疫チェックポイント阻害剤)を増やすことを検討している。腫瘍細胞株の免疫原性の差がもたらす影響(免疫原性の低い腫瘍細胞株においても、所属リンパ節のCD169陽性マクロファージの除去によって腫瘍の増殖が促進するのかどうか)や、治療メカニズムの異なる抗体薬の治療効果(腫瘍局所ではなく、所属リンパ節でのT細胞活性化を増強するとされているCTLA-4抗体薬を用いた場合でも、CD169陽性マクロファージの除去によって治療効果の減弱が起こるのかどうか)の変化を解析する。これらの解析結果から、CD169陽性マクロファージの抗腫瘍免疫への関わりについて、より深い考察が可能になると考えている。 ヒト癌組織標本を用いた免疫染色による解析を開始する。大腸癌症例での腫瘍細胞のPD-L1やMSI発現と所属リンパ節でのCD169発現との相関を解析する。また、複数の癌種ごとに腫瘍へ浸潤するCD8陽性T細胞の程度と、腫瘍細胞のPD-L1発現の相関を解析することによって、PD-(L)1抗体薬の治療効果判定への利用の妥当性を検証する。 今後も、マウス実験による基礎的知見の収集を継続しながら、病理学的解析の技術を生かしたヒト病理組織標本解析を加えることで、全体の解析に厚みを持たせることができるよう注力していきたい。
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Research Products
(3 results)