2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K07463
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
赤澤 祐子 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (80582113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 正洋 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50284683)
柴田 龍弘 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (90311414)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シグネチャー解析 / 被ばく者 / 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌は放射線の晩発影響の代表的疾患である。原爆投下から70年以上経過した現在でも広島・長崎被ばく者においては発癌の増加が認められている。被ばく者組織検体は放射線晩発影響を研究する上での唯一のコホートであり、我々はこれまで被ばく発癌の機序について検討を重ねてきた。しかし、原爆による放射線被ばく関連腫瘍の分子生物学的機序や遺伝子的な特異性は未だ不明である。近年、変異スペクトラム解析の進歩によって、癌の原因によって生じた遺伝子変異パターンが、癌遺伝子に残される“変異シグネチャー”として検出可能であることが発表された。しかし被ばく者癌に特殊な遺伝子変異シグネチャーが存在するかは、これまで検討されていない。今回我々は、2008年に収集を開始した被ばく者癌組織バンク検体を用い、被ばくにより発症した癌に特異的な遺伝子変異シグネチャーを特定し、放射線発癌の遺伝子学的メカニズムの解明に挑んでいる。 これまで工甲状腺、肺、大腸について合計20人の近距離被ばく(爆心地より2km)患者における癌組織とその周囲の正常組織を収集し、DNA, RNAを抽出した。これらの約半数についてはSequence が終了し、現在解析中である。また家族歴、治療歴をデーターベース化を行った。
福島原発事故後の若年甲状腺癌の懸念もあり、疫学的解析のみでなく、分子病理学的観点から放射線の関与を客観的に評価する学術的基盤や予測バイオマーカーが必要である。被ばく者試料での特徴的変異シグネチャーを検出できれば、ヒトでの放射線特異的バイオマーカーとして、被ばく関連発癌を客観的評価する根拠となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定数の約1/3のシークエンスが終了している。また、協力機関との連携も順調に行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
予定症例のうち、解析が終了していない検体、被ばく者組織バンクの爆心地より2km以内の近距離被ばく症例91例のうち、放射線による有意な過剰相対リスクが明らかである乳腺21例、肺27例、結腸20例を目標として解析を進めていく。 さらに、我々は、被ばく者では発癌リスクの背景として、自然発生DNA損傷の亢進が観られ、遺伝子不安定性の関与のあることを報告した(Naruke Y et al, 2009, Cancer)。この結果より、組織幹細胞レベルで数十年前の被ばくによる遺伝子不安定性が惹起されていて、発癌の生涯リスクに関与するものと考察される。変異シグネチャーの有無と癌背景組織の遺伝子不安定性の関連を、DNA損傷応答分子発現とアレイCGHによるDNAコピー数異常を指標に明らかにしていく予定である。
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Research Products
(1 results)