2019 Fiscal Year Research-status Report
転写共役因子YAPを介したリゾホスファチジン酸のがん進展制御機構の解明
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19K07472
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
安田 大恭 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (70594951)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | DLL4 / Notch / 血管新生 / LPA受容体 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまでに、リゾホスファチジン酸 (LPA) 受容体であるLPA4とLPA6の二重欠損マウスが胎生期の血管形成不全が原因で致死となること、およびヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に発現するLPA4/LPA6が三量体Gタンパク質G12/13、低分子量Gタンパク質Rho、転写共役因子YAP/TAZシグナルを介して、Notch経路の血管制御因子DLL4の発現を抑制し、血管内皮細胞 (EC) の萌出による血管新生に寄与することを明らかにしてきた。昨年度は核内のYAP/TAZがDLL4発現を抑制する分子機序の解明を目的に研究を行った。 EC特異的にLPA4/LPA6を二重欠損させたマウスは、コントロールマウスと比較して新生血管先端領域においてYAPの核内移行が低下し、DLL4の発現量が増加していた。また、HUVECを用いた免疫沈降法やChIP解析により、YAP、β-カテニン、ERG、Notch細胞内ドメイン (NICD) それぞれの核内における複合体形成とその転写制御機能の可能性を検証したが、それを示す明確な結果は得られなかった。しかしながら、Aktが促すβ-カテニンとNICDによるDLL4遺伝子発現誘導を、核内のYAPが抑制することを明らかにした。これらの結果から、血管内皮細胞のLPA-LPA4/LPA6シグナルはYAP/TAZの核内移行を促し、DLL4遺伝子の発現を制御することが示唆された。以上の成果を論文にまとめて、昨年、Journal of Clinical Investigationに公表した。今後は、EC特異的LPA4/LPA6二重欠損マウスを用いて、がん病態モデル解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度の研究計画であるYAPのDLL4発現抑制作用の分子機構の解析を予定通り進めた。当初予定していた免疫沈降法やChIP解析では結果を得られなかったものの、その後のDLL4発現解析やYAP変異体の過剰発現細胞を用いた解析により、Aktが促すβ-カテニンとNICDによるDLL4遺伝子発現誘導を核内のYAPが抑制する分子機構を明らかにした。その後、それらを論文にまとめて、Journal of Clinical Investigationに公表することができた。以上の理由から、本研究課題は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内において腫瘍血管のLPA4とLPA6ががん進展に果たす役割を明らかにするために、今回作製したEC特異的LPA4/LPA6二重欠損マウスを用いて、がん病態モデル解析を進める。具体的にはAOM/DSS投与による大腸がんモデルやLCC投与による肺がんモデル解析により、腫瘍サイズ、腫瘍血管の異常、血管透過性、腫瘍転移などを検証する予定である。仮に、EC特異的LPA4/LPA6二重欠損マウスにControlマウスと比べて有意な異常が得られた場合は、YAPやDLL4の発現や機能制御が関与するかを明らかにする。また、LPA4/LPA6アゴニストをがん病態モデルマウスに投与して、その抗腫瘍効果を検証する。
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Causes of Carryover |
昨年度は細胞を用いた解析を主に進めて、概ね順調に結果を得たため、少しではあるが次年度使用額が生じた。今年度はマウスを用いた研究のため、その解析とともに飼育維持費もかかることが予想され、今年度の助成金と合わせてその費用に充てる予定である。
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