2019 Fiscal Year Research-status Report
扁平上皮がんの新規がん遺伝子THG-1の機能解析と分子標的治療への応用
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19K07473
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 裕之 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70375509)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TSC22D4 / THG-1 / 扁平上皮がん / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
正常扁平上皮を構成する細胞は常に更新され、絶妙なバランスで細胞数を維持することで恒常性が保たれている。構成細胞は基底部に存在する幹細胞が非対称分裂を行うことで供給され、表皮に移動するに伴い増殖を止めて分化する。近年がんの発生には、その組織幹細胞に変異が蓄積することで、がん幹細胞が発生することが重要であると考えられている。しかしどのようなメカニズムで、がん幹細胞の発生、がんの発症、及び悪性化へ導かれるかは不明である。申請者はTsc-22ファミリータンパク質の一つであるTHG-1の機能を解析する過程で、THG-1が皮膚、食道などの重層扁平上皮の基底細胞に発現することを見出した。基底細胞には幹細胞が存在し、がん化と密接に関わることから、食道、肺、子宮頸部扁平上皮がんの臨床組織を用いてTHG-1の発現について検討したところ、扁平上皮がんの約8割にTHG-1が高発現することを見出した。そこで皮膚角化細胞株にTHG-1を発現させたところ、EGFによる増殖、運動性の亢進、及びがん細胞様形態変化が認められた。次に食道がん細胞21種でTHG-1をノックダウンすると、半数以上の細胞で増殖能が低下することを見出した。その際の細胞応答を詳細に検討したところ、細胞種によっては顕著な細胞老化の形態を示すことが明らかになった。さらにTHG-1を完全にノックアウトした細胞を樹立したところ、細胞老化の応答が増強された。さらにTHG-1をノックダウンするとstemnessに関わる遺伝子群の低下が認められ、これら遺伝子の制御にも重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
扁平上皮がん細胞でTHG-1をノックダウンした際の細胞応答について、THG-1によるstemnessの維持機構、THG-1結合ペプチドについて論文発表を行った。RNA-seqを行い、過剰発現及びノックダウンによって変動する遺伝子についていくつかの候補が得られた。またin vivoの新たな評価系を樹立し、腫瘍形成能の可視化、及び定量的な評価が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
扁平上皮がん細胞のin vivo 移植モデルを用いて、がん細胞の増殖、浸潤、転移におけるTHG-1の役割を明らかにする。 RNA-seqによって得られた遺伝子の細胞生物学的な意義について評価を進める。 新規THG-1結合タンパク質(3種類)について細胞老化、stemnessの維持機構について重点的な解析を進める。
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