2019 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患の粘膜治癒過程におけるトロンボモジュリンの作用機序の解明
Project/Area Number |
19K07479
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
高娃 阿栄 三重大学, 医学系研究科, 助教 (50643805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 英嗣 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20577415)
朴 恩正 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (20644587)
島岡 要 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40281133)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 上皮再生 / オルガノイド / トロンボモジュリン / 粘膜治癒 / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、炎症性腸疾患の粘膜治癒に対する遺伝子組換え型可溶性トロンボモジュリン製剤(rsTM)の有効性の検討を行った。In vitro 評価系として、マウス小腸上皮から単離したクリプト(陰窩)をマトリゲル中3次元培養することで形成させたオルガノイドの初期成熟段階にrsTM(2μg/mL,20μg/mL)を添加し、オルガノイド成熟の形態学的変化および腸管上皮遺伝子群の発現変化を調べた。rsTM処置群では、オルガノイドの成長が促進され、腸管上皮幹細胞と上皮細胞遺伝子群の発現が濃度依存的に上昇した。In vivo評価系として、デキストラン硫酸ナトリウム誘発性腸炎マウスモデルの回復期にrsTM(2 mg/kg, 20 mg/kg)を腹腔内投与し、臨床症状(体重減少・血便)の改善と生存率に対する効果を調べた。腸組織を回収し、病理組織学的検査並びに腸上皮遺伝子群の発現変化につい確認した。20 mg/kg のrsTM治療群では、マウスの体重回復が促進され、組織学的にも腸炎が有意に改善され延命効果が確認された。また、腸管上皮幹細胞と上皮細胞遺伝子群の発現増加が見られ、組織修復に重要な因子であるlong non-coding RNA H19の発現が有意に上昇することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究計画の内容に関して、予定していたマウス小腸上皮オルガノイドの培養実験に成功し、オルガノイドを用いた検討により、遺伝子組換え型可溶性トロンボモジュリン製剤(rsTM)の腸上皮再生への有効性が確認できている。さらに、デキストラン硫酸ナトリウム誘発性腸炎マウスモデルを用いた検討により、rsTMが腸炎モデルマウスの体重回復を著しく促進し、組織学的にも腸炎を有意に改善し、延命効果を示すことが確認できているため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TMが構造的に五つのドメインからなるが、どのドメインが粘膜治癒促進作用を担うのかについて、まずはTMの各ドメイン変異体を作製し、次にTMの構造ー機能の解析を行う。
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Causes of Carryover |
参加予定していた学会が新型コロナで中止になり、旅費が生じなかったため次年度使用額が生じた。
使用計画として、次年度実施予定しているトロンボモジュリンの構造ー機能解析実験の試薬購入費用に充てる。
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