2020 Fiscal Year Research-status Report
Anti-tumor activity of potent PDK4 inhibitors from plants for KRAS-mutated intractable cancers
Project/Area Number |
19K07480
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
井上 寛一 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (30176440)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | PDK4阻害剤 / KRAS / エネルギー代謝 / Cryptotanshinone |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は癌の発生に関わる遺伝子の解析をとおしてその悪性化の分子機構の研究を行ってきた。ヒト癌細胞では好気的環境下でも解糖系が優位に働くグルコース代謝のシフト)(Warburg効果)が生じており。環境ストレス下での癌細胞の生存や悪性化進行に密接に関係していると考えられている。PDK4は解糖系から呼吸系への分岐点でピルビン酸をアセチルCoAに代謝するPDHを抑制する調節分子であり解糖と呼吸のバランスを制御するRegulatorの1つである。我々はPDK4阻害活性を持つ低分子化合物, Cryptotanshinon(CTN)に着目し研究を進めてきた。CTNは膵臓癌細胞株MIAPaCa-2, Panc-1, 及び大腸癌細胞株に対して1-10μMの底濃度でPDHのリン酸化を抑制し、mutant K-Ras蛋白の発現を抑制することで足場非依存性増殖や3次元スフェロイド形成を抑制することをこれまでに明らかにしてきた。また、CTNはin vivoのマウス腫瘍モデルにおいても異所性(皮下接種)および同所性接種(膵臓腫瘍)の両方の実験系で有意の抗腫瘍効果を示した。さらに、CTNがヒト膵臓癌および大腸癌細胞株において抗腫瘍効果を発揮するさいのmutantK-Rasの役割について検討をおこなった。Mutant K-Rasを持つ膵臓癌細胞株MIAPaCa-2とwild-type K-Rasを持つ膵臓癌細胞株BxPC-3、さらに、K-Rasのstatusだけが異なり他の遺伝的背景が同じ大腸癌細胞株HCT116を使って解析を行ったところ、CNTによる癌化抑制効果は、mutant K-Rasを持つ癌細胞株に対してより有効であることがわかった。さらに、CTNは膵臓癌、大腸癌だけでなく膀胱癌など多くの日か癌細胞に対して抑制効果があることを明らかにしてきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、まず、高転移性の膀胱癌細胞株と膵臓癌細胞株を用いてCTNによる転移浸潤抑制能とそのメカニズムについて検討し以下のことを明らかにした。1. 膀胱癌細胞株T24とJ82においてCTNはマトリゲルアッセイでの細胞浸潤能を顕著に抑制した。2. この抑制にはPDK4の抑制からmTORシグナル経路、β-カテニン、N-カドヘリンを介したEMT(上皮間葉転換)の抑制が重要な役割を果たしていた。3.高転移性膵臓癌細胞株SUIT2を使ったマウス同所性腫瘍形成実験においてCTNは腫瘍の転移播種を有意に抑制した。以上の結果からCTNは転移浸潤の抑制活性も有することを明らかにした。 次に、CTNによるK-Rasを介した癌化抑制におけるエネルギー代謝の役割についてさらに詳細に検討した。我々はMIAPaCa-2細胞において、CTNがグルタミン代謝だけでなく脂質代謝を抑制することでレドックス制御や活性酸素の産生を促進していることを明らかにした。この脂質代謝の抑制にはIDH1(isocitrate dehydrogenase 1 )と(FASN) fatty acid synthase がCTNの下流で重要な役割を果たしていることもわかった。膵臓癌のエネルギー代謝はグルコースよりもグルタミンの代謝に依存している部分か多いことが報告されている。さらにその制御には活性化K-Rasの介在が重要であった。我々の今回の研究によって、CTNによるがん化抑制の新たな標的としてグルタミン代謝および脂質代謝が重要であることがわかってきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
CTNによるグルタミン代謝および脂質代謝の抑制にK-Ras抑制がどのように関わっているのか、またK-Rasからこれら経路を制御する分子メカニズムについてさらに詳細に解析してゆく。またその直接の標的を明らかにすることによってCTNと既存の抗癌剤、および新たな分子標的抗癌剤との相乗作用の有効性や副作用の軽減などについても検討してゆく。
|