2020 Fiscal Year Research-status Report
転写因子MafBによる恒常性維持に関わるマクロファージの制御機構の解析
Project/Area Number |
19K07499
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
濱田 理人 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20567630)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MAFB / マクロファージ / 脾臓 / 恒常性維持 |
Outline of Annual Research Achievements |
単球-マクロファージは組織修復や免疫恒常性維持に必要であり、慢性的な障害などでこれらの機能が損なわれるとマクロファージ自体が病的要因となる。動脈硬化や心筋梗塞、腫瘍ではマクロファージの組織修復機能が逆に病態を悪化させてしまうことがある。これらの病巣に浸潤する単球のほとんどは脾臓由来であることが近年明らかになり、このメカニズムが新たな治療ターゲットとして注目されている。本研究課題では転写因子MafBが脾臓での単球-マクロファージの産生に必要であることを示し、マクロファージが関わる様々な病態の新たな治療標的を探索することを目的とし研究を行った。今年度は腫瘍随伴マクロファージの産生にMAFBがどのように関わるのかを中心に、マクロファージ特異的にMafb遺伝子を欠損したマウスを用いて、脾臓に注目して行った。その結果、MAFBは脾臓からのマクロファージ産生を抑制していた。このことはマクロファージの過剰産生を防ぐメカニズムにMAFBが寄与していることが考えられる。またMafbCKOマウスの脾臓ではIL6の発現が増加しており、IL6シグナルを阻害するため抗IL6抗体をMafbCKOマウスに投与したところ、腫瘍サイズが減少し、脾臓内のマクロファージ前駆体の数も減少した。これはMAFBがIL6シグナルを阻害する役割を持っていることを意味する。また腫瘍組織内でのマクロファージを分取しRNAシーケンスを行ったが、MafbCKOと野生型で大きな差はみられなかった。これはMafbCKOでの腫瘍サイズの増大は脾臓が原因であるという結果をサポートする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したようにMAFBが脾臓からの単球マクロファージ系細胞の産生に関わるかどうか確かめるため、マクロファージ特異的にMAFB欠損マウス(MAFBCKO)の脾臓を野生型マウス移植し、脾臓由来の腫瘍随伴マクロファージが腫瘍内に集まるのにMAFBが関わるのかどうか検証した。 脾臓移植についてはMAFBCKOの脾臓を摘出し、3分の1にカットし、レシピエントになる脾臓摘出したマウスの大網に脾臓片を包み込む処置を施した。3週間後、マウス肺がん細胞(LLC)を皮下に投与し、更に3週間後に腫瘍の大きさ、腫瘍内のマクロファージ数をカウントした。その結果、MAFBCKOの脾臓を移植したマウスの脾臓は野生型の脾臓を移植した対照実験群と比べて、顕著に大きくなることが明らかとなった。 このことから、MAFBCKOの脾臓は、腫瘍からの刺激によりマクロファージ系列の分化が活性化されていると考えられた。そこで、担がん状態のMAFBCKOの脾臓を摘出し、FACS において解析したところ、MAFBCKOの脾臓内の造血幹細胞やマクロファージ前駆細胞の割合が、野生型より多くなっていることが明らかとなった。このことから、MAFBは脾臓において、マクロファージ産生を抑制することが明らかとなった。また、MafbCKOの脾臓ではIL6の発現が増加しており、抗IL6R抗体を投与しIL6シグナルを阻害したところ、MafbCKOの腫瘍サイズは減少し、脾臓内のマクロファージ前駆体数も減少した。このことはIL6の増加が原因であることを突き止めた。また腫瘍組織内でのマクロファージを分取しRNAシーケンスを行ったが、MafbCKOと野生型で大きな差はみられなかった。これはMafbCKOでの腫瘍サイズの増大は脾臓が原因であるという結果をサポートする。
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Strategy for Future Research Activity |
LLC細胞投与後のMafbCKO の赤脾髄マクロファージのRNAシーケンスを行い、MafBのターゲット遺伝子を調べる。候補が得られた場合、Luciferase アッセイ,ChIPアッセイなどのプロモーター解析を行いMafBが直接制御するかどうか調べる。また新たなターゲット遺伝子が未知なものが見つかった場合、遺伝子欠損マウスを作製し解析する。 創傷治癒モデル、高脂肪食誘導などは、炎症性マクロファージおよび炎症抑制性マクロファージの数のバランスや浸潤するタイミングが重要となる。これらのモデルにおいてMafBCKOの脾臓でのマクロファージ前駆体が増加するかどうかFACS解析、コロニーアッセイにより調べる。また、病変部でのマクロファージが増加しているのかどうかを免疫組織化学的解析により検討する。また、Mafbを過剰発現させるレチノイン酸内包リポソームを使って脾臓のマクロファージにMAFBを発現させ、脾臓からの単球の産生が増加するかどうかを確認する。
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