2021 Fiscal Year Research-status Report
in vivoイメージングを組合せた腸上皮治癒過程での細胞脱分化機構解明
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19K07500
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
松本 有加 順天堂大学, 医学部, 助教 (50813672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 哲也 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (70265809)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸上皮治癒過程 / 腸上皮障害マウスモデル / 腸上皮細胞脱分化 / 生体内イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、上皮障害後の治癒過程早期に出現する、創傷部を被覆する扁平な未分化細胞を生体内イメージングで追跡し、幹細胞への脱分化を惹起する特異的因子を同定することを目指した研究である。昨年度までに、生体内イメージングを可能とするための、新しい小腸上皮障害マウスモデルを確立した。このモデルでは、開腹下に管腔内にカテーテルを挿入して腸管内処理をおこなうことで、任意の腸の領域に腸上皮障害が作製できる。このモデルを解析し、上皮傷害発生後の早期に、創傷部を被覆する扁平な未分化細胞が出現することを確認した。この未分化細胞を含んだ組織片を、レーザーマイクロダイセクションにより選択的に採集し、そこからRNAを抽出する手順を確認した。今年度は、昨年度から開始した、目的の未分化細胞の網羅的遺伝子発現解析に必要な高品質かつ十分な量のRNAを得るために、未分化細胞と、比較となる終末分化細胞、幹細胞のレーザーダイセクションを継続しておこなった。また、確立した上皮障害マウスモデルに対し、実際に生体内イメージングを施行するための技術として、まず野生型マウスを用い、数日間マウスを生かしたまま、小腸内腔を体外から観察可能とする技術の開発をおこなった。マウスの腹壁にabdominal imaging window(AIW)を装着し、同一の小腸の部位を体外から観察とした。この状態で一定期間、AIWが逸脱・脱落することなく同じ腸管内腔の部位を追跡して観察が可能な状態を保ったまま、マウスを一定期間生存させる周術期管理、飼養方法の最適化をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、COVID-19感染蔓延と、それに伴う緊急事態宣言の発令により、実験動物の購入、実験に必要な製品の確保が一部困難となったこと、動物舎の利用が制限されたことから、実験の一部を一時中断した。実験を安定して継続可能と判断できた段階で、実験準備に取り掛かり再開し、昨年度から引き続きおこなっていた、野生型マウスへAIW装着技術の適正化により、AIWマウスモデルを確立した。網羅的遺伝子解析に用いるRNAについては、マイクロセクションで対象の腸上皮細胞から回収したRNAを逆転写して得られたcDNAを用いて半定量PCRをおこなうと、非上皮細胞マーカーの発現を認めた。そのため、マイクロダイセクションによるサンプル採取操作の適正化をおこなう必要があった。また高品質のRNAを得るため、組織固定からマイクロダイセクション、RNA抽出までの各工程の見直しをおこなった。1回の操作、また1検体から採取できるRNA量がわずかであるため、小腸上皮障害マウスモデルを追加作製して、目的細胞からのRNAの回収をおこない、十分量のRNAサンプルの採集を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
AIW装着マウスモデルが確立できしだい、これを小腸上皮障害マウスモデルに適用する。AIW装着と上皮障害の2つの処置をおこなったマウスを、一定期間生存させる手技、管理方法を検証し、小腸上皮障害領域に対する生体内イメージング技術を確立する。並行して、レーザーマイクロダイゼクションで採集した、創傷治癒早期に特異的な未分化細胞、幹細胞、分化細胞のRNAをもちいて、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析をおこない、これらを比較することで目的の未分化細胞のマーカーの候補となる遺伝子を複数抽出する。抽出した遺伝子群について、in situ hybridizationを用いた組織学的解析で、創傷部を被覆する扁平な細胞に特異的に発現する遺伝子を選別する。選別した遺伝子について蛍光標識をおこなった遺伝子改変マウスの作製を委託する。作製した遺伝子改変マウスに対し、まず小腸上皮障害マウスモデルを適応し、障害部腸組織を採取して目的の細胞について蛍光標識がされているかを確認する。その後、この遺伝子改変マウスをもちい、小腸上皮障害の生体内イメージングをおこない、創傷治癒早期特異的な未分化細胞の動態を解析する。
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Causes of Carryover |
2021年度の研究計画上、必要な物品は注文完了したため、次年度に繰越とした。次年度に行うマウス手術に必要な備品の購入に用いる予定である。
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