2019 Fiscal Year Research-status Report
心血管病を抑制するリン脂質代謝の解明と新規心血管病治療・予防法開発の基盤構築
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19K07502
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
渡辺 一広 山梨大学, 大学院総合研究部, 臨床助教 (50535549)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ホスホリパーゼA2 / リシルオキシダーゼ / 細胞外マトリックス / 大動脈解離 |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈解離は大動脈壁の中膜が突然破断することで発症する、重篤で予後不良の疾患である。病変部位における細胞外マトリックスの脆弱性が発症の一因と考えられているが、病態を反映した簡便な動物モデルが存在せず、発症機序に関して不明な点が多い。 今回、我々はV型分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2-V)遺伝子欠損マウスがAngiotensin II誘発性の大動脈解離を高率に発症することを発見し、sPLA2-Vを起点とするリン脂質代謝が大動脈解離の発症を抑制することを見出した。 その機序として、1)sPLA2-Vは大動脈血管内皮細胞より分泌され、ヘパラン硫酸を介して細胞表面に存在していること、2)sPLA2-Vは刺激を受けた大動脈壁の細胞膜に作用してオレイン酸およびリノール酸を産生すること、3)これらの不飽和脂肪酸が大動脈平滑筋におけるLysyl oxidase(LOX:細胞外マトリックスを架橋することで大動脈壁を安定化させる酵素)の発現を促進することで大動脈解離を抑制することを解明した。 さらに、細胞レベルのメカニズムとして、刺激を受けた大動脈平滑筋において、オレイン酸およびリノール酸が小胞体ストレスとその下流にある転写因子GATA3(LOX抑制作用を有する)を抑制することで、結果としてLOX産生を促進することを示した。 sPLA2-V遺伝子欠損マウスは、簡便な処置で高頻度に大動脈解離を誘発できる、リン脂質代謝に関連した世界初の心血管病モデルと言える。また、本研究結果から、sPLA2-Vを起点とするリン脂質代謝が大動脈解離の新しい創薬標的として有用であると考えられる。以上の内容は現在論文として投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
V型分泌性ホスホリパーゼA2が大動脈解離を抑制する機序を解明し、予定通り論文として投稿しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、論文投稿したsPLA2-Vの大動脈解離抑制作用に関する知見を更にヒト臨床に応用するため、血中sPLA2-Vの濃度・活性測定方法や、sPLA2-Vの酵素活性を安定化させる仕組みを開発していきたい。
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