2020 Fiscal Year Research-status Report
Cell damage suppression mechanism via cell polarity control by a novel inflammatory response signal pathway
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19K07505
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
堀越 洋輔 鳥取大学, 医学部, 助教 (60448678)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | aPKC / 細胞極性 / 上皮バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、「上皮バリア機能の破綻を伴う急性肝障害が、新規炎症応答を介した細胞極性制御因子aPKCの活性により抑制されるか」、明らかとすることを目的する。これまでの解析から、脂溶性ラジカル発生剤であるAMVNやLPSを低濃度で処理した培養上皮細胞では、カルシウム除去により誘導されるタイトジャンクション(TJ)の消失(破壊)が抑制された。この効果は、LPSなどの刺激による誘導されるインフラマソームの活性化阻害剤のカスパーゼ1阻害剤の処理により阻害された。 本年度は、高濃度のLPS刺激により誘導される多臓器障害(肝障害、肺障害)モデルマウスを用いて、低濃度LPSの前処理による肝障害、肺障害とそれら組織の細胞間接着構造の保護作用について検討した。その結果、低濃度LPSの前処理により、肝障害、肺障害が抑制された。また、それら組織の細胞間接着構造の変化も抑えられた。一方、低容量LPSやAMVN刺激では炎症刺激や酸化ストレス刺激が生じる。そこで脂溶性抗酸化物質にLPSやAMVN刺激と同様の作用があるか検討した。その結果、抗酸化作用を有する物質においても、カルシウム除去による培養上皮細胞の細胞間接着構造の消失を抑制することが分かった。しかし、インフラマーム活性化に対する作用については不明である。 現在、それら肝臓、肺障害組織におけるaPKCの活性化、インフラマソームの活性化について検討している。また、炎症性腸疾患モデルマウスを用いた組織障害に対する抑制効果についても検討を加える予定である。さらに、低容量LPSやAMVN刺激処理による細胞間接着構造保護作用に対する抗酸化物質の影響を検討し酸化レスシグナルとのクロストークについて検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の解析から以下の結果が得られた。 ①培養上皮細胞の培地中カルシウム除去によりタイトジャンクション(TJ)は消失(破壊)される。このTJの消失は、低容量 LPSや低容量AMVNの前処理により抑制された。この様な作用は、いくつかの脂溶性化合物でも観察された。 ②上皮細胞のTJ形成に対する作用についても検討を加えた。その結果、低容量AMVN、LPS処理は、TJ形成を促進することが明らかとなった。aPKC活性化やaPKCを含む Par-3複合体形成が増加していた。 ③高濃度のLPS刺激により誘導される多臓器(肝障害、肺障害)モデルマウスを用いて、低濃度LPSの前処理による肝障害、肺障害とそれら組織の細胞間接着構造の保護作用について検討した。その結果、低濃度LPSの前処理により、肝障害、肺障害が抑制された。また、それら組織の細胞間接着構造の変化も抑えられた。 以上の結果より、弱い酸化ストレス刺激や低容量LPS刺激によるaPKCの活性化は、上皮細胞のTJの消失(破壊)を抑制し上皮バリア機能の強化あるいは安定化を引き起こすと事が示唆された。また、上皮バリア機能の安定化だけではなく、TJの形成を促進したことから、上皮バリア機能の維持や再形成(修復)においても働くことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、高濃度のLPS刺激により誘導される肝障害、肺障害モデルマウスを用いた解析から、低濃度LPSの前処理による肝障害、肺障害とそれら組織の細胞間接着構造の保護作用が確認された。その際、それら組織の細胞間接着構造の異常も抑制された。今後、これらの効果が、「aPKCの活性化→インフラマソームの活性化→細胞間接着構造の保護」という情報伝達経路を介しているか検討する。さらに、炎症性腸疾患モデルマウスを用いた組織障害に対する抑制効果についても検証する。一方、培養細胞を使った検討から、細胞か接着構造の形成過程(再形成)においても低容量AMVNまたはLPSの前処理により、その過程が促進されることが明らかとなった。この点についてもインフラマソームの活性化を介しているか、インフラマソーム活性化の阻害により検証する。
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Causes of Carryover |
前年度末の会計調整の過程で差額が生じたため。
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