2020 Fiscal Year Research-status Report
癌を選択的に抑制しかつ心機能を改善するKLF5阻害薬の開発とその分子作用機序解明
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19K07512
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
仲矢 丈雄 自治医科大学, 医学部, 准教授 (80512277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 良三 自治医科大学, 医学部, 学長 (60207975)
相澤 健一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70436484)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | KLF5 / 蛋白間相互作用阻害 / 大腸癌 / 心不全 / 分子創薬 / 天然変性蛋白 / 転写因子 / アンメットニーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
私達は、Wntシグナル活性化による腸上皮幹細胞からの腫瘍形成がKLF5を同時に欠損させることで完全に抑制されることを解明した(Cancer Res 2014)。また、心不全においてKLF5がその活性化に重要であるWntシグナルが亢進することが知られている。これらはKLF5が大腸癌、心不全の有望な治療標的であることを示す。しかし、KLFは立体構造が未解明な天然変性蛋白で、立体構造に基づく阻害薬開発ができない。また、核内因子であるため阻害薬は核に到達する低分子でなければならない。このため、KLFに対する阻害薬開発は困難であった。 そこで、私達は独自の方法で困難を克服し、KLF5の蛋白間相互作用を阻害すると予想される低分子化合物による新しい分子創薬を試みた。その結果、私達は、KLF5阻害化合物(NC化合物)が、ヒト大腸正常細胞を傷害せずヒト大腸癌細胞を選択的に抑制し、ヌードマウスに移植したヒト大腸癌細胞を抑制しin vivoで腫瘍抑制能を示すことを見出した。 私達は、KLF5阻害化合物が心不全モデルマウスの病態を改善することも見出している。ここから、本化合物は心機能を改善しかつ癌を抑制する臨床上のアンメットニーズに応える新たな分子創薬に発展する可能性が高いと期待される。 私達は、NC化合物が大腸癌細胞ではKLF5等の蛋白量を抑制するが、正常細胞ではこれらの蛋白量を抑制しないことを見出した。さらに、最近、理研長田裕之博士らとの共同研究で化合物結合ビーズを作製し、化合物結合蛋白を高感度の質量分析により網羅的に同定した。この化合物結合蛋白の結果から、なぜKLF5蛋白の量を減少させるかなど、化合物の分子作用機構を説明できると期待される。現在その観点から化合物の分子作用機序の解明を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NC化合物の結合蛋白を同定し、化合物結合蛋白により化合物の分子作用機構が説明できると考えられた。現在その観点から研究を進めている。 我々は、KLF5の分子機能研究の中で、我々の手で解明した分子機構を新たな治療薬開発へつなげることを目指してきた。しかしKLF5は立体構造の解かれていない天然変性蛋白であり、かつ主に核に存在する転写因子であるために薬剤の開発は困難だった。これらの困難を克服するために、独自の計算でKLF5阻害薬を分子設計し、正常細胞を傷害せず癌細胞を選択的に抑制する抗癌薬として作用することを示した。これは、新たな癌選択的抑制薬の開発に発展すると期待され、今後分子機構解明、化合物の改良を進めていく。 我々は、心不全モデルマウスに対して本化合物が心機能を改善することも見出した。これはKLF5阻害薬が、心機能を改善する抗腫瘍薬になりうることを示す。抗癌薬の心毒性、心機能の悪い多くの癌患者の治療は臨床上の大きな問題である。これに対し、本化合物は心機能の悪い癌患者は多いと考えられ、アンメットニーズに応える有用な治療薬としての発展が期待される。 多くのKLF5のような立体構造解明がなされていない蛋白を標的とした分子創薬は難航しており、創薬研究の重要な課題となっている。我々の研究成果は、KLF5のみならず、他の多くの疾患原因因子を標的にした分子創薬に応用可能であり、これからの発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、KLF5阻害化合物の分子作用機構解明、in vivoでの評価、化合物改良を進める。本化合物が、なぜ癌細胞を抑制するのに正常細胞に対する傷害が少ないか、心不全を改善するかなどについて分子機構の解明を進める。化合物結合ビーズでの解析結果に基づき、化合物の分子作用機構についてさらに解明を進める。KLF5とこれを修飾する機能蛋白との相互作用に対する本化合物の阻害作用が見出されれば、KLF5複合体の結晶化を進める。またKLF5阻害アッセイ系を確立して、本化合物の改良と新規化合物のスクリーニングを行う。
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Causes of Carryover |
COVID19の影響等で実験などに遅れが生じ、未使用金が発生した。余剰金は実験にかかる消耗品等の購入に充てる予定である。
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