2019 Fiscal Year Research-status Report
サイトカインシグナルの増強による抗腫瘍効果の増大と新たな抗腫瘍薬の開発
Project/Area Number |
19K07514
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三瀬 節子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00269052)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 昭彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90182815)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 腫瘍免疫 / サイトカイン / SOCS3 / IL-21 |
Outline of Annual Research Achievements |
SOCS3をT細胞で欠損したCD4CreSOCS3f/f(SOCS3cKO)マウスは、野生型に比べ強い抗腫瘍効果を持ち、移植された腫瘍細胞株の増殖を抑える。このメカニズムに関して以下の結果を得た。 ①SOCS3cKOマウスの抗腫瘍効果には、CD4+細胞とCD8+細胞の両方が必要である。抗CD8抗体を投与によってCD8+細胞を除去するとSOCS3cKOマウスの強い抗腫瘍効果がなくなることから、CD8+細胞は必要である。一方、CD8単独陽性細胞で特異的に発現するE8ICreでSOCS3を欠損させたマウスはSOCS3cKOマウスほど強い抗腫瘍効果を持たない。養子移入実験でCD8+細胞のみを移入しても、CD4+細胞とCD8+細胞を両方移植したものほど強い抗腫瘍効果を示さないことから、CD8+細胞のみでなくCD4+細胞も必要であることが明らかになった。 ②IL-21が抗腫瘍効果を発揮している可能性が示唆された。SOCS3cKOマウスの腫瘍内のCD4+細胞はIL-21を多く産生する。IL-21を強制的に発現させた腫瘍株は、親株に比べ野生型マウスやSOCS3cKOマウスで速やかに拒絶され、SOCS3cKOマウスの方が腫瘍は小さい。IL-21はSOCS3欠損CD8+細胞の増殖やエフェクター分子の発現を亢進することがin vitroの実験で明らかになった。IL-21受容体を欠損しSOCS3野生型マウスでは、腫瘍の増殖は亢進していた。 ③SOCS3の阻害薬としてフォルスコリンを同定し、in vivoでの抗腫瘍効果を検証している。阻害剤のスクリーニング実験から、数種の化合物をSOCS3阻害剤として同定し、その中でフォルスコリンについて検証している。フォルスコリンはin vitroにおいてSTAT1とSTAT3を強く阻害する。腫瘍を持ったマウスにフォルスコリンを投与すると、腫瘍増殖の抑制効果が顕れた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①SOCS3cKOマウスでの抗腫瘍効果の増強のメカニズムの解析②ヒト細胞のおけるSOCS3欠損による抗腫瘍効果の検証③SOCS3阻害剤のスクリーニングとSOCS3阻害剤による抗腫瘍効果の検証、の3つの項目について明らかにしようとしている。 このうち①に関して、E8ICreが使用できたことや養子移入の実験系が確立できたことで、CD8+細胞のみならずCD4+細胞も必要であることが明らかになった。当初CD4+細胞の必要性に関しては予想していなかったために、その点について解析するために時間を要してしまった。そのためにRNAseqの実験まで行うことができなかった。その一方、CD4+細胞が産生するIL-21の重要性が示唆され、IL-21の重要性に関し重点的に解析し、結果を得ることができた。そのため、SOCS3欠損型CD4+細胞はIL-21を多く産生し、それがSOCS3欠損CD8+細胞に作用し、CD8+細胞の増殖やエフェクター作用の亢進を促すという作業仮説を立てることができた。また確立した養子移入の実験系を用いて、腫瘍抗原特異的なT細胞の遺伝子発現の解析が可能となった。 ③に関しては、解析すべきSOCS3の阻害剤を絞り込むことができ、その中でフォルスコリンに注目することができた。フォルスコリンはin vitroでSOCS3を阻害し、in vivoでも効果があることを明らかにした。 ②に関しては、用いるNSG超免疫不全マウスがまだ繁殖中のため進捗していない。
|
Strategy for Future Research Activity |
①RNAseqによる遺伝子発現解析を行う。確立できたB16-OVAとOT-I、OT-IIマウスを用いた養子移入の系によって、腫瘍内に浸潤してきた腫瘍抗原特異的なCD8+細胞を回収し、RNAseqによって野生型とSOCS3欠損型との遺伝子発現の違いを明らかにする。クラスタリング解析によって、エフェクター細胞、疲弊化細胞、メモリー細胞の分化の違いを明らかにする。同時にエフェクター分子の発現、CTL活性、細胞の代謝の違いなどについて解析し、得られた遺伝子発現の違いが実際の現象を裏付けていることを検証する。 ②IL-21によるメカニズムの解析を行う。In vivoでの解析としてIL-21レセプター欠損型(IL-21RKO)SOCS3cKOダブルノックアウトマウスでの腫瘍細胞株の増殖を、SOCS3cKO、IL-21RKO、野生型マウスと比較し、抗腫瘍効果におけるIL-21の役割を明らかにする。またIL-21RKOのOT-Iマウスを養子移入することによってCD8+細胞へのIL-21の役割を明らかにする。In vitroでの解析として、IL-21を培養中に加えた時のCTLアッセイや走化性アッセイを野生型とSOCS3欠損型とで比較する。 ③ヒト細胞での解析を行う。CAR導入したT細胞にCrispr/Cas9のエレクトロポレーションによりSOCS3をノックアウトする。CD19を発現するB16腫瘍株を接種したNSG超免疫不全マウスに養子移入することでヒト化マウスを作製し、SOCS3欠損による抗腫瘍効果を明らかにする。 ④フォルスコリンおよびその他のSOCS3阻害剤の検討を行う。マウスを用いてフォルスコリンおよびその他のSOCS3阻害剤のin vivoでの腫瘍増殖抑制効果を明らかにする。同時にこの効果がSOCS3を阻害しているために起こっていることを明らかにする。
|
-
[Journal Article] The NOTCH-FOXM1 Axis Plays a Key Role in Mitochondrial Biogenesis in the Induction of Human Stem Cell Memory-like CAR-T Cells.2020
Author(s)
Kondo T, Ando M, Nagai N, Tomisato W, Srirat T, Liu B, Mise-Omata S, Ikeda M, Chikuma S, Nishimasu H, Nureki O, Ohmura M, Hayakawa N, Hishiki T, Uchibori R, Ozawa K, Yoshimura A.
-
Journal Title
Cancer Res
Volume: 80
Pages: 471-483
DOI
Peer Reviewed / Open Access