2019 Fiscal Year Research-status Report
Imaging the ATP metabolism in Trypanosoma cruzi intracellular amastigotes
Project/Area Number |
19K07523
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
稲岡 健ダニエル 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (10623803)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トリパノソーマ科原虫 / エネルギー代謝 / ATeam / ATPバイオセンサー / ミトコンドリア / グリコソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
Trypanosoma cruziはシャーガス病を引起す寄生原虫で、その生活環において、媒介昆虫内(EPI)、血流中(TRP)、細胞内(AMA)の3つのステージに大きく分けられる。臨床的に重要なのはAMAであるが、大量培養系が確立されておらず解析が困難である事から、特に研究が進んでおらず、AMAで用いられる炭素源やエネルギー代謝における各細胞小器官の役割など、基礎的な情報すら未だ不明である。本研究の最終目的は、寄生現象を支えるエネルギー代謝の生理的役割を解明することである。 2019年度では、「ATP合成の単一細胞解析を行うツールの開発」を行い、ATPのバイオセンサーとして開発されたATeamをミトコンドリア、グリコソーム、細胞質それぞれに発現させた各種組換原虫作製を試みた。まず、過剰発現用プラスミドを作製し、培養が容易なEPIを用いて形質転換を行い、組換原虫のクローンを得た。なお、ミトコンドリア局在ATeam作製には、呼吸鎖複合体IIのミトコンドリア移行シグナルをATeamのN末に付加した。また、グリコソーム局在ATeam作製には、グリセロールキナーゼのグリコソーム移行シグナルを含むC末の13残基をATeamに付加した。そして、細胞質局在ATeam作製には、N末・C末ともにシグナルを含まないATeamを用いた。組換細胞を用いてin vitroでEPIからTRPへと細胞分化させ、TRPを宿主細胞(3T3細胞など)に感染させた。また、FRETシグナルからATPを定量するために、精製された組換えATeamが必要であり、こちらの精製条件の最適化を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Trypanosoma cruziはシャーガス病を引起す寄生原虫で、その生活環において、媒介昆虫内(EPI)、血流中(TRP)、細胞内(AMA)の3つのステージに大きく分けられる。臨床的に重要なのはAMAであるが、大量培養系が確立されておらず、解析が困難である事から、特に研究が進んでおらず、AMAで用いられる炭素源やエネルギー代謝における各細胞小器官の役割など、基礎的な情報すら未だ不明である。本研究の最終目的は、寄生現象を支えるエネルギー代謝の生理的役割を解明することである。その第一段階として、AMAの:①ATP合成の単一細胞解析を行うツールの開発、②感染細胞内でATP合成に使われる主な炭素源の同定、③ATP合成が行われる主な細胞区画の解明、④ATP合成を阻害する低分子化合物の探索を行い、単一細胞レベルでATP合成の詳細を明らかにする。 2019年度では、「①ATP合成の単一細胞解析を行うツールの開発」に集中し研究を進めている。既に、Trypanosoma cruziを用いて、ATeamをミトコンドリア、グリコソーム、細胞質に局在させるためのプラスミドを用いてEPIに形質転換し、上記3種類のクローンを得た。さらに、ATPの解析に必要な、精製されたATeamを得るために、大腸菌発現用にコドン最適化したATeamを準備し、過剰発現用プラスミドを作成し、大腸菌に形質転換した。現在、ATeam過剰発現をIPTGを用いて誘導させ、精製条件の最適化を行っている。 以上のことから、計画していた3種類の組換え原虫を得ることが出来、組換えATeamの精製に着手したため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の成果を踏まえ、2020年度は以下のように研究を進める。 ①感染細胞内でATP合成に使われる主な炭素源の同定、②ATP合成が行われる主な細胞区画の解明。AMA、EPI、TRPの各ステージで、培地にグルコース、プロリン、スレオニン、グリセロール、コハク酸、脂肪酸等の炭素源を加え、各細胞区画におけるATP濃度を測定する。具体的には、各炭素源を加えた際の各細胞区分のATeamのYFP及びCFPの蛍光写真を撮影し、YFP/CFPシグナルの比を測定する。各細胞区画のATP濃度の計算には、精製組換えATeamを用い、ATPの希釈系列におけるYFP/CFPシグナルの比を測定して得られた検量線を用いる。これにより、原虫のATP合成に関する、ステージ、炭素源、細胞区画のマトリックスを作製し、単一細胞レベルでATP合成の詳細を明らかにし、寄生現象を支えるエネルギー代謝の生理的役割を解明するための生化学的基盤を確立する。
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