2021 Fiscal Year Research-status Report
メトホルミンによる抗マラリア免疫記憶の増強とそのメカニズムの解明
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19K07524
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
都田 真奈 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (30398151)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マラリア / 免疫 / メトホルミン |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア感染症に対しては、終生免疫が誘導されず、有効なワクチンも未完成であり、感染コントロールが難しい。本研究では、安価で手に入りやすい経口糖尿病治療薬メトホルミンにより免疫記憶増強を図る。さらにそのメカニズムを明らかにすることにより、マラリアの免疫記憶減弱打破に寄与できると考えている。本研究では、具体的には、メトホルミンのT細胞およびB細胞の活性化、記憶細胞形成、維持、二次応答を増強とそのメカニズムを明らかにする。 メトホルミン投与マウスと非投与マウスにマラリア原虫Plasmodimu chabaudi chabaudiを感染させ、原虫血症が上昇した10日目から2週間治療した。このようにしてメトホルミン投与マウスと非投与マウスの抗原暴露量と期間を同一にした場合、Plasmodium berghei ANKA再感染に対して、メトホルミン投与マウスの方が、軽度ではあるが感染抵抗性を示す傾向であった。このことから、メトホルミン投与は、免疫細胞に直接作用して免疫記憶形成や二次応答を増強することが考えられた。そこで、感染開始から1ヶ月以上たち治癒したマウス、つまり記憶期のマウスの免疫応答の比較を行った。その結果、メトホルミンは、脾臓の記憶Tfh細胞と記憶GCB細胞の割合や数に影響を及ぼさず、また抗体価も上昇させなかった。さらに、メトホルミン投与マウスの方が、脾臓の記憶CD4T細胞のマラリア原虫粗抗原/樹状細胞で刺激後のIFN-γ、IL-2産生が低かった。この結果から、メトホルミンは、B細胞とCD4T細胞の免疫記憶形成、記憶細胞維持を増強しないことが示唆された。今後は、ほかの獲得免疫細胞にも着目しメトホルミンの影響を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、研究協力者である学部学生の登学が制限される期間があったため遅れている。また、現在までの研究で、メトホルミン投与により記憶CD4T細胞の分化促進・機能亢進も、記憶B細胞分化も、抗体産生亢進も認められないことを明らかにしたため、これらの細胞の代謝やシグナル伝達解析をするという当初計画の優先順位が下がった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、脾臓の記憶CD4T細胞のIFN-γ、IL-2産生が低いという結果が得られたため、引き続き実験を繰り返し、再現性をみる。また、これまでに着目しなかったCD8T細胞や感染赤血球、赤血球分化へのメトホルミンの影響をフローサイトメトリーで解析する。 メトホルミンに誘導された再感染抵抗性が、CD4T細胞やCD8T細胞に依存するか明らかにするため、再感染前にCD4T細胞やCD8T細胞をマウスから除去することでメトホルミンによる感染抵抗性がなくなるか確認する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、研究協力者である学生の研究活動が制限されたり、学会がオンライン開催に変更になったことで次年度使用が生じた。次年度に実施する解析や動物実験に必要なマウス、フローサイトメトリーに使用する抗体等の消耗品に充てる予定である。
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