2020 Fiscal Year Research-status Report
寄生蠕虫によるTh17型免疫疾患抑制機構の普遍性と特殊性の解析
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19K07529
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
長田 良雄 産業医科大学, 医学部, 教授 (80282515)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 寄生虫 / 免疫修飾 / 関節炎 / 肝蛭 / 条虫 / マラリア原虫 / Th2 / Th17 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「寄生蠕虫によるTh17型免疫疾患抑制機構の普遍性と特殊性の解析」というコンセプトに基づきマウスにウシII型コラーゲン(IIC)を免疫することにより惹起されるコラーゲン関節炎(CIA)に対する様々な寄生虫の影響とその抑制機構を比較解析している。昨年度までの実験により肝蛭は体内移行期においてCIAを抑制する可能性が示された。しかしながら本年度はその繰り返し実験の結果が安定しなかったため、感染のタイミングを再設定するための予備検討を実施中である。 また、本年度は昨年度実施状況報告書「今後の研究の推進方策」の中で言及したネズミマラリア原虫(P.yoelii17X NL、以下Py)やネズミ中殖条虫(Mesocestoides vogae、以下Mv)についてCIAへの効果を検証した。その結果、両寄生虫とも顕著なCIA抑制作用を示すことを見出した。(前者は蠕虫ではないが、蠕虫の抑制機序と比較することによりその普遍性を推測するためにも有用な実験系であると考え、並行して実験を進めている。)免疫学的解析により、Py感染マウスではIL-10産生上昇とTNF-αおよびIFN-γ産生抑制が、MvではMDSC(骨髄由来抑制性細胞)の増加とTNF-α産生抑制および抗コラーゲン抗体産生抑制が特に顕著に観察された。今後、これらの変化がそれぞれの寄生虫のCIA抑制に果たす役割について、肝蛭や旋毛虫との比較を交えて解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響で本学では一時期実験動物の入荷が規制されており、若干の遅れが生じた。また肝蛭の実験についてはまだ至適実験条件が確立できていないため、KOマウスを用いた解析開始が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、住血吸虫・肝蛭・旋毛虫・ネズミ中殖条虫など多くの蠕虫で「抗コラーゲン抗体産生の低下」という現象を見出している。本現象がCIA症状の抑制とどのように関連しているか、抗体価の経時的な変化と関節炎症状の変化を個体ごとに解析し相関性をみる実験を行う予定である。 また、CIA抑制への好酸球の関与について検証するためのIL-5KOマウスの準備(DBA/1への戻し交配)はほぼ終了したので、今年度はSTAT6KOマウス、IL-10KOマウスに加えてIL-5KOマウスを用いた実験を開始する予定である。 ネズミマラリア原虫についても蠕虫との比較を行うため抑制機構の解析を並行して進める。主としてIL-10KOマウスを用いた解析を予定している。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルスの影響で旅費の使用がなくなった。加えて一時、本学への実験動物の入荷規制が行われたことや、実験条件再検討のため当初の計画が遅れたことなどにより物品費の使用額が少なくなった。現時点では本年度の上記諸条件の影響については見通せないが、状況を見ながら当初計画に従い実験を進める予定である。
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Research Products
(1 results)