2019 Fiscal Year Research-status Report
原虫における小胞体シグナルペプチドに依存しない新規分泌メカニズムの解明
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19K07531
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中野 由美子 (斉藤由美子) 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (30321764)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Entamoeba histolytica / Rab GTPase / traffic |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外へのタンパク質輸送は、病原体の感染と宿主応答において多くの重要な役割を担う。これまでの通説では、細胞外に分泌されるタンパク質にはN末端にシグナルペプチドが存在し、小胞体に組み込まれた後、小胞を介して細胞外に分泌される。しかし、シグナルペプチドが無くとも細胞外に分泌されるタンパク質は原虫や宿主細胞で複数報告されており、そのメカニズムは不明である。本申請では赤痢アメーバを対象とし、申請者が発見した小胞体に局在するRab8A GTPaseによって制御される細胞表面タンパク質の輸送を解明する。Rab8A GTPaseの発現抑制によって、接着に関与する細胞表面タンパク質TolAタンパク質の輸送が阻害される。定常状態でのTolAの局在を観察するために、内部のコイルドコイル領域にFLAGタグを挿入し、発現誘導可能なプロモーターの下流で発現させる赤痢アメーバ形質転換株を作製した。抗FLAG抗体で染色したTolAの細胞内局在は、phagocytic cup であり、赤血球を捕獲した非常に初期のphagosome に局在していた。また、細胞辺縁のTolAの局在はファロイジンで染色されるF-Actinと共局在していた。TolAは細胞表面にも検出されるのに関わらず、シグナルペプチドと膜貫通ドメインが存在しない。2番目のアミノ酸がミリストイル化修飾を受けると予測されるグリシンであるため、このグリシン残基をアラニン置換することで、TolAの細胞辺縁への局在が阻害された。よってTolAはミリストイル化を受け、細胞辺縁への集積に必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TolAの細胞内局在が赤血球の貪食過程で興味深い局在像を示し、辺縁への局在にアクチン細胞骨格が重要であることが新たに分かった。もう一つの実験計画である、細胞接着に重要な変異株の単離に付いても、現在スクリーニング中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ミリストイル化TolAの輸送がRab8 GTPase依存的な現象であることを、赤痢アメーバでTolAとRab8二重変異株を作製し、証明する。接着が向上する変異株の単離を行い、クローニングをする。表面タンパク質のビオチン化、あるいは全ゲノム解析によって、接着を促進させる分子を同定する。
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Causes of Carryover |
国内学会が東京近郊で開催されたため、旅費の計上が実際よりも多かった。
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Research Products
(2 results)