2020 Fiscal Year Research-status Report
原虫における小胞体シグナルペプチドに依存しない新規分泌メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K07531
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中野 由美子 (斉藤由美子) 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (30321764)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ミリストイル / GTPase |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外へのタンパク質輸送は、新生ペプチドのN末に存在するシグナルペプチドに依存している。シグナルペプチドを有するタンパク質は、小胞体上のトランスロコンを通過し、小胞体内腔でシグナルペプチドが切断されたのちに、COPII小胞に積み込まれ、ゴルジ体以降のオルガネラへと輸送される。これまでの解析で、赤痢アメーバの小胞体上に局在するRab8A GTPaseが、N末端にミリストイル化修飾を受けると予測されるTolAタンパク質を細胞表面に輸送していることを明らかにした。今年度は、マラリア原虫の小胞体に局在するRab5b GTPase (PfRab5b) が、同じくN末端にミリストイル化修飾を受けるAK2タンパク質の輸送に関与していることを明らかにした。まず、PfRab5bの輸送メカニズムを明らかにするために、共免疫沈降と質量解析によって結合タンパク質の単離を試みた。候補タンパク質のうちPfArf GTPaseはN末端がミリストイル化修飾をうける。PfArfとPfRab5bとの二重発現株を作成し、PfArfはマラリア原虫の小胞体近傍でPfRab5bと共局在していることを確認した。PfRab5bの変異型を発現させると、ミリストイル化AK2の輸送が阻害されることが報告されている。そこでPfArfの変異型を発現しても、AK2の輸送が阻害され細胞内に蓄積することを示した。別の候補タンパク質のPfRab1bの変異型を発現した際には、AK2の輸送阻害は観察されなかった。よって、マラリア原虫でもシグナルペプチドに依存しない輸送経路を解明することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年度に解析した赤痢アメーバにおける輸送経路だけでなく、マラリア原虫における輸送経路のメカニズムを解明することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
赤痢アメーバとマラリア原虫の両者で、ミリストイル化タンパク質の輸送機構の解明を進める。赤痢アメーバでは、TolAタンパク質の輸送シグナルの同定、並びに細胞接着に関与する分子の新規単離を試みる。マラリア原虫では、PfRab5bとPfArfと結合する分子の機能の解明を進める。
|
Causes of Carryover |
学会発表がオンラインになり、旅費を使用しなかったため。
|