2020 Fiscal Year Research-status Report
脂肪性肝炎に対するBacteroides菌種の有効性の検討
Project/Area Number |
19K07539
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
矢野 嘉彦 神戸大学, 医学研究科, 講師 (60419489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 奈美子 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (40645214)
林 祥剛 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (50189669) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂肪性肝疾患 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は動物モデルを用いた脂肪性肝炎(NASH)に対するBacteroides菌種の有効性についての研究である。Bacteroides菌種の投与が動脈硬化を改善するという前研究を受けて、本研究では脂肪性肝炎の動物モデルを用いてBacteroides菌種の有効性について検討を行っている。NASHモデルとしては、当初コリン欠乏メチオニン減量食を用いて検討した。予備検討では、Bacteroides菌種の投与群では脂肪肝の改善が見られたが、個体数を増やして検討すると、個体によるばらつきが大きいことがわかり、脂肪性肝炎の程度を組織学的に半定量的に評価するNASスコアを用いた解析では、最終的にこのモデルではBacteroides菌種の投与による脂肪肝の改善効果は認められなかった。元来、コリン欠乏メチオニン減量食によるNASHモデルは体重増多を伴わない脂肪性肝炎モデルマウスであることから、肝臓重量や脂肪重量、体重の評価がしづらいこともあったため、その後は60kcal%脂肪食の高脂肪食による脂肪肝モデルを用いて、体重や肝重量、脂肪重量を含めてBacteroides菌種の有効性解析を継続している。 本研究では、脂肪肝の改善に伴う短鎖脂肪酸、アミノ酸代謝の変化を検討することも課題としている。これについては、短鎖脂肪酸の受容体であるGPR43のノックアウトマウスを用いて、同様に高脂肪食を負荷し、体重、内臓脂肪、脂肪肝についての評価を検討している。現在は高脂肪食とともに、短鎖脂肪酸の産生を増やす意味で難消化でんぷんを多く含む高脂肪食を用いて、GPR43の評価をしやすい実験系をについて検討している。現在までに難消化でんぷんを多く含む高脂肪食を用いた腸管内容物の有機酸解析から、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が有意に増えることは確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的であるNASHモデルを用いたBacteroidesの有効性については、前年度に続いて検討を続けている。もともと我々の予備実験として、コリン欠乏メチオニン減量食を用いたNASHモデルマウスに対して、Bacteroides菌を投与した投与群では、コントロール群に比べて脂肪肝の改善効果を認めていた。まずはその検証も続けてきたが、個体数を増やして繰り返し実験を行ったところ、脂肪肝の改善効果には個体差が大きく、腸内細菌叢のばらつきが大きいことが具体的な問題点として上がってきた。最終的に脂肪性肝炎の程度を組織学的に評価するNASスコアを用いた解析では、残念ながらこのモデルではBacteroides投与による脂肪肝の改善効果が認められなかった。 コリン欠乏メチオニン減量食によるNASHモデルは、もともと体重増多を伴わない脂肪性肝炎モデルマウスであることから、現在は60kcal%脂肪食である高脂肪食による脂肪肝モデルを用いて、体重や肝重量、脂肪重量を含めてBacteroides菌種の有効性解析を継続している。現在、腸内細菌叢の変化、腸管内容物の短鎖脂肪酸の変化について解析を進めている。 また、その機序について、菌叢が分泌する代謝産物である短鎖脂肪酸を介した間接的作用についても検討している。短鎖脂肪酸受容体の一つであるGPR43を介した脂肪肝の改善効果をみるため、現在はGPR43のノックアウトマウスを用いてNASHモデルの検討を行っている。これまでの検討では、60kcal%脂肪食による高脂肪食を用いた検討では、体重、脂肪肝などのphenotypeや血液検査値や腸内細菌叢については、GPR43ノックアウトマウスとコントロールマウスでは違いは見られなかった。組織学的にも腸管上皮に違いはなく、今後腸管免疫系についてはphenotypeに違いが出た場合に評価検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
比較的個体差のないと思われたマウスを用いた動物実験であったが、個体によって脂肪肝の改善効果には大きくばらつきがあることは、やや予想に反していたが、これも得られた結果としては興味深いものであった。現在はその原因についても検討しており、元来保有している腸内細菌叢の違いが、外的なBacteroides投与にも大きくかかわると考えられ、この部分を中心に解析していく予定である。すなわち、元来保有している腸内細菌叢の構成が、Bacteroides菌種の投与後の反応にも大きくかかわっているのではないかと考えている。そこで、高脂肪食による脂肪肝モデルマウスを用いて、Bacteroides投与による効果を検証するとともに、Bacteroides投与群においても脂肪肝の改善効果のあった群となかった群において、特に投与前の腸内細菌叢の評価に注目して解析すべく、現在検討中である。また、高脂肪食による脂肪肝モデルマウスにおけるBacteroides菌種の有効性については、組織学的評価、血清学的評価とともに、分子機序の観点から脂肪酸代謝にかかわる遺伝子発現群の定量PCRは行っていく予定としている。 GPR43のノックアウトマウスについては、現在は60kcal%脂肪食とともに、45kcal%脂肪食に難消化でんぷんを混ぜた高脂肪食を作成し、短鎖脂肪酸の産生を増やした高脂肪食を用いて肝重量や脂肪肝の評価についても継続する。この系において、Bacteroides菌種の投与による脂肪肝改善効果や腸管免疫系の評価についても行っていく予定である。また同様にこの高脂肪食によるマウスモデルが確立できれば、アミノ酸トランスポーターの欠損マウスについての実験も今年度に行っていく予定としている。
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Causes of Carryover |
COVID感染状況に伴って、学会研究会がなくなったことから、情報収集に出かける旅費、また研究そのものも一時中断せざるをえなくなり、次年度に繰り越して研究を行うこととなったため。
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