2019 Fiscal Year Research-status Report
バルトネラ由来新規分泌タンパク質BafAによる血管新生促進機構の解明と創薬応用
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19K07548
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
塚本 健太郎 藤田医科大学, 医学部, 講師 (80434596)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Bartonella / 血管内皮細胞 / 血管新生 / 細胞増殖 / VEGF |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトに病原性を示すバルトネラ属細菌は、感染局所において血管内皮細胞の増殖を促進させ血管新生を惹起する。本菌が分泌する物質の中には血管内皮細胞を増殖させる因子が存在すると考えられてきたが、これまで該当する因子は特定されていなかった。最近、我々は猫ひっかき病の起因菌として知られるBartonella henselaeから血管内皮細胞に対して増殖促進活性をもつ分泌タンパク質BafAを発見した。本研究ではバルトネラ感染症におけるBafAの病原因子としての位置づけを明確にするため、BafAの細胞増殖促進機構および血管新生促進活性ついて検討した。 BafAは配列情報からオートトランスポーターであると予想されたため、細胞外に露出されるN末端領域約500アミノ酸(BafA-PD)を大腸菌発現系により調製した。BafA-PDをヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に添加し細胞増殖促進活性を調べた結果、活性の強さは血管内皮増殖因子VEGFと同程度であることがわかった。さらにBafAの血管新生活性の有無について、HUVEC管腔構造形成試験、大動脈リングアッセイ、マトリゲルプラグアッセイを実施して検討したところ、BafAはいずれの実験系においても血管新生を促進する活性を示した。次にBafAの作用機序を調べるため、細胞増殖シグナルに関与するMEK/ERK経路の活性化を調べたところ、MEK1/2およびERK1/2はBafA-PD処理後速やかにリン酸化された。このシグナル伝達経路の上流にあるVEGFR2がBafA受容体として機能していると予想し解析を進めた結果、VEGFR2はBafAと相互作用すること、さらにVEGFR2の1175番目のチロシン残基がリン酸化されることも確認できた。以上のことから、BafAは血管内皮細胞に発現しているVEGFR2に結合後、細胞増殖や血管新生を促進させることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BafAの血管新生活性をin vitro, ex vivo, in vivoで評価する実験系を構築し、さらに細胞表面受容体の同定を含め作用機序の解析も順調に進めることができた。これらの成果は現在論文にまとめ投稿中である。よって当初計画をおおむね達成しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出したBafAはBartonella henselae以外のバルトネラ属細菌にもホモログが存在していることから、これらホモログについても単離し、血管新生活性の有無を確認する。また、BafA分子内の活性に必須な領域の特定についても進めていく。課題としては、BafAのタンパク質調製について収量と純度を改善させる必要があるため、タンパク質調製方法の再検討を並行して行う。
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Causes of Carryover |
理由:令和元年度は研究が予定通り進んだため、ほぼ当初計画どおりの経費使用となった。20,247円の次年度使用額については、年度末に細胞培養用培地の購入を見越していたが、実験計画の変更がが生じたため、次年度に使用することとなった。
使用計画:令和2年度は、まずタンパク質精製条件の検討を行うため、発現・精製に必要なベクター、試薬等を購入する。また、BafAのVEGFR2結合領域特定のため、結合を評価する実験系を構築する予定であり、これに必要なベクターおよび試薬も購入する。今年度は新型コロナウイルスの影響により、現時点で学会開催が未定の部分も多く、旅費に関して余剰が生じるようであれば物品費に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)