2020 Fiscal Year Research-status Report
バルトネラ由来新規分泌タンパク質BafAによる血管新生促進機構の解明と創薬応用
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19K07548
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
塚本 健太郎 藤田医科大学, 医学部, 講師 (80434596)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バルトネラ / Bartonella / オートトランスポーター / BafA / 血管内皮細胞 / 血管新生 / VEGF |
Outline of Annual Research Achievements |
バルトネラ属細菌は血管内皮細胞に感染した後、細胞増殖を促進させて自身の増殖の場を拡大させる。前年度までに我々は、猫ひっかき病の起因菌であるBartonella henselaeから血管内皮細胞の増殖を促進させる菌由来因子BafAを同定し、この本態がグラム陰性菌の分泌装置の一つとして知られるオートトランスポーターであることを明らかにした。今年度はまずこれらの成果を論文にまとめ、2020年7月にNature Communication誌にて報告した。次に、B. henselae以外のバルトネラ属細菌から複数のBafAオルソログを同定し、これらの生理活性を比較した。B. henselae以外でヒトに病原性を示す有名なバルトネラ属細菌としては、B. quintana,とB. bacilliformisがある。これら2菌種に加え、ヒトへの感染例が報告されているB. elizabethae, B. koehlerae, B. clarridgeiae, B. grahamiiと、感染例の報告がほとんどないB. tribocorum, B. doshiaeについて、各菌のゲノム中にBafAと相同性の高い配列を有するタンパク質をコードする遺伝子を検索したところ、いずれの菌種にもB. henselae由来BafAと30%~70%のアミノ酸配列の相同性がある遺伝子が見つかった。そこでこれらの遺伝子をクローニングし、大腸菌発現系を用いて組換えタンパク質を調製して、血管内皮細胞に対する作用を調べた。その結果、B. tribocorumとB. doshiaeのBafAオルソログは血管内皮細胞に対する増殖活性を示さなかったのに対し、これら2菌種以外のBafAオルソログは細胞増殖を促進させ、VEGFR2-ERKシグナル伝達経路を活性化させることも確認できた。以上のことから、バルトネラ属のヒトに対する感染性や病原性には、BafAの生理活性の有無が関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バルトネラ由来血管新生因子BafAの同定、血管形成活性の解析、受容体特定を含めた作用機序解析までを論文にまとめ、発表することができた。また、新たな複数のBafAオルソログの同定と活性比較解析も順調に進めることができた。よって当初計画をおおむね達成しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出したBafAは多くのバルトネラ属の菌種にオルソログが存在しており、これらの中から生理活性がより高く、かつ物性として安定性の高いものを見出す。これはBafAのもつ血管形成活性を創薬に展開することに繋がる。また、BafA分子内の受容体結合部位、活性中心などはまだ特定できていないため、部分欠失変異体や点変異体タンパク質を作製し、これらについて特定を進めていく。さらに立体構造を明らかにするためのX線結晶構造解析も進める。
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Causes of Carryover |
2020年度は研究が予定通り進んだため、ほぼ当初計画どおりの経費使用となった。3,452円の次年度使用額については、年度末に細胞培養用培地の購入を見越していたが、実験計画の変更がが生じたため、次年度に使用することとなった。
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Research Products
(12 results)