2019 Fiscal Year Research-status Report
Toxin-antitoxin systemsの自己防御機能と病原性活性化機構
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19K07555
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸邉 亨 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70207596)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 病原性 / 腸管出血性大腸菌 / 発現抑制 / 増殖抑制 / RNase |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管出血性大腸菌EHEC O157 Sakai株が保有するType II Toxin-Antitoxin (TA) systems のうち、ToxinがRNase活性を持つ可能性があるものをゲノム情報より既存のものとの相同性により抽出し、大腸菌K-12株にはない2つのものを含め7種のTA systemsを見いだした。これらのtoxin遺伝子をアラビノース誘導性のプロモーター制御下においた融合遺伝子により、人為的に発現誘導し、増殖に対する効果を調べたところ、3種については影響が認められなかった。同時に、病原性遺伝子espBの発現を検討したところ、7種のすべてにおいて発現低下が観察された。増殖を抑制した4種については、発現誘導レベルを増殖にほとんど影響しない程度まで低下させて、さらに病原性遺伝子の発現に対する効果を調べたところ、依然として発現を低下させていた。一方で、対照のhouse keeping 遺伝子の発現は低下していなかった。そこで、7種全てのTA system遺伝子を欠失させた変異株を作製し、増殖および病原性遺伝子の発現に対する効果を検討したところ、増殖には影響しなかったが、EspBの産生量が増加していた。これらの結果は、少なくともTA systemsの一部は、病原性遺伝子の発現を優先的に抑制することを示している。また、TA systemの機能が、遺伝子発現の選択的な制御に関与している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画である、病原性の選択的抑制に関与するTA systemsの検索および、その選択性の確認が達成できている。また、予備試験で示唆された、TA systemsの新規の機能である選択的な抑制が確認でき、今後は計画通りに遂行することで、新たなTA systemsの細菌の増殖や進化における役割が明らかにできると確信した。
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Strategy for Future Research Activity |
人為的な発現誘導によるtoxin遺伝子の効果が確認できたが、染色体上のtoxin遺伝子からの発現レベルでの効果は不明である。そこで、それぞれの染色体上のTA system から産生されるAntitoxinタンパク質を人為的に分解誘導できる系を作製し、その効果を検討する。 RNase Toxinの選択性を明らかにするために、RNA-seq解析を行い、優先的に分解されるRNA(遺伝子)をリストアップする。特に病原性遺伝子についての共通性や相違点を詳細に検討する。 TA systemを活性化する環境因子を検索し、TA systemsの菌の生育における役割を推定する。また、外来性遺伝子の過剰な発現などの内的な因子についても検討し、外来性遺伝子の獲得との関連性についても解析を進める。 病原性発現活性化の条件下ではToxinの発現誘導による病原性遺伝子の発現抑制がほとんど認められない。この原因について、検討するため、病原性発現活性化条件でのantitoxinの安定性や、TA systemsの発現レベルを検討する。さらに、toxin活性化に拮抗する因子を同定する。
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Causes of Carryover |
投稿した論文の採択決定が年度内になかったことにより、次年度の支払い予定となってしまったため。
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Research Products
(2 results)