2020 Fiscal Year Research-status Report
Toxin-antitoxin systemsの自己防御機能と病原性活性化機構
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19K07555
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸邉 亨 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70207596)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 病原性 / 腸管出血性大腸菌 / 発現抑制 / 増殖抑制 / RNase |
Outline of Annual Research Achievements |
EHEC O157 Sakai株に見出した新規のToxin-Antitoxin (TA) system遺伝子であるECs5400-ECs5399(以下5400-5399と表記する)についての解析を中心に行なった。まず、5400-5399オペロンの発現制御についての解析を進めた。一般的にTA system遺伝子の発現はAntitoxinのオペレーターへの結合により自己抑制されていることより、Antitoxin 5399による発現制御を検討した。その結果、5400-5399オペロンのプロモーター活性は5399により抑制されること、さらに、その抑制効果は5399単独よりも5400とともに発現させた方が強いことが明らかとなった。また、プロモーター活性はRpoSにより活性化されることも明らかとなった。さらに、Antitoxin 5399の分解には主にプロテアーゼLonは関与していることも明らかとなった。一方、type II TA systemでRNase toxinを持つものについて増殖に影響しない発現レベルで再検討し、EspB病原因子の産生を優先的に低下させるものは5400を含め4種類のみであることを確認し、RNase toxinにより効果が異なることが明らかとなった。他方、5400を増殖に影響のない低レベルで発現誘導した菌よりRNAを調整し、RNA-seq解析を行なった。その結果、5400の抑制効果は病原性遺伝子の一部のみであること、病原性遺伝子以外にも多数の遺伝子の発現が抑制されていることが明らかとなった。これより、5400 Toxinの遺伝子選択性は当初予想した病原性遺伝子に優先的なものではなく、異なる基準により優先的に選択されている可能性が強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では2020年度中に、RNA-seqによる網羅的解析によりRNase Toxin の標的遺伝子の特徴を推定する予定であったが、新型コロナによる社会活動自粛の影響による研究活動低下のために年度末近くになり漸くRNA-seqの解析に着手することができた。しかし、まだ解析は不十分であるが、当初の予想とは異なる可能性が示唆されたことから、今後詳細に解析する必要がある。一方で、EHECに新規に見出したTA systemの発現解析とAntitoxinの制御での役割および転写に関与するシグマ因子やプロテアーゼを明らかにすることができた。この結果は、5400-5399 systemはストレスに応答して発現活性化することを示唆しており、ストレス応答と生存に関連している可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqデータの詳細な解析を進め、仮説の修正と検証を行う必要がある。また、他のEspBの産生を抑制するTA system RNase toxinについても比較解析することで、それぞれの特徴および共通点を明らかにする必要がある。さらに、RNase の標的部位(配列)を明らかにするためには、toxin活性化後短時間でのRNA調整を行い、RNA-seq解析を行う必要がある。これらの解析を総合して、Toxinの遺伝子選択性の分子基盤を明らかにするとともに、標的の遺伝子リストを明らかにし、生理的な意義を推測し、実験により確認する。また、TA systemの発現に影響を与えるストレス条件を検索し、菌生存における役割を推定する。
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Causes of Carryover |
研究活動低下に伴いRNA-seq解析が大幅に遅れた為に、次年度に持ち越しとなりました。
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Research Products
(4 results)