2021 Fiscal Year Research-status Report
ブルーリ潰瘍(M.ulcerans感染症)における無痛性病態メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K07557
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
後藤 正道 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80325779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 幸一 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (20206478)
圓 純一郎 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (30587879)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Mycolactone / 細胞傷害 / 無痛性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ブルーリ潰瘍におけるM. ulcerans subsp. shinshuense、M. ulcerans及びmycolactone A/B、mycolactone S1、mycolactone S2による細胞障害とその成立機序の検索及び受容体・シグナル伝達経路の同定により、ブルーリ潰瘍における無痛性及び有痛性病変成立のメカニズムを明らかにするものである。 2021年度はMycolactoneの細胞への侵入経路もしくは、受容体・シグナル伝達経路の同定を行うために、新たに、ハーバード大学岸義人教授から化学合成したmycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2の提供を受け、 これらのmycolactoneを培養神経細胞培地へ注入し、効果判定を行った。今回提供されたmycolactoneのうち、S1とS2は予想される細胞傷害を示したが、それらよりも強い毒性を持つはずのA/Bの細胞傷害効果が弱いという矛盾する結果が得られた。そこで、2011年に岸教授から提供され、残っていた少量のA/Bを用いて同様の実験を行ったところ、充分な細胞傷害効果が得られた。現在、これらの原因を解明中である。 また、ヒト単球由来のTHP-1細胞にレンチウイルスCRISPRライブラリーを遺伝子導入した後、mycolactone で処理を行い、生存細胞を回収し次世代シークエンサーを用いて、mycolactone の細胞死誘導に関与する遺伝子の探索を行った。候補遺伝子のノックアウトTHP-1細胞を作成し、mycolactone 処理による生存で評価した。さらにmycolactone が誘導するERストレスに関して、遺伝子発現解析を用いて解析した。 しかし、コロナウイルス感染症により研究施設の使用に制限がかかったため、現在実験は遅れて進めている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度はMycolactoneの細胞への侵入経路もしくは、受容体・シグナル伝達経路の同定を行うために、M. ulcerans subsp. shinshuense及びM. ulceransそれぞれから由来するmycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2による細胞障害とその成立機序の検索を行うことを目的とした。ハーバード大学岸義人教授から化学合成したmycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2の提供を受け、mycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2による培養神経細胞への注入を行い、効果判定を行った また、ヒト単球由来のTHP-1細胞にレンチウイルスCRISPRライブラリーを遺伝子導入した後、mycolactoneで処理を行った。生存細胞を回収し次世代シークエンサーを用いて、mycolactone の細胞死誘導に関与する遺伝子の探索を行った。候補遺伝子のノックアウトTHP-1細胞を作成し、mycolactone 処理による生存で評価した。さらにmycolactone が誘導するERストレスに関して、遺伝子発現解析を用いて解析した。 ただ、実験を行う体制を整えたところで、世界中でコロナウイルス感染症が蔓延し、大学においても研究施設の使用に制限がかかったため、実験を中断することがあり、遅れている状況である。 また、研究分担者との間でオンラインによる情報交換は行えているが、直接会うことができない状況が継続しており、実験の進捗に遅れが発生している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、遅れているM. ulcerans subsp. shinshuense及びM. ulceransそれぞれから由来するmycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2による細胞障害とその成立機序の検索もしくは、受容体・シグナル伝達経路を同定するために、Mycolactone により引き起こされる細胞動態の詳細な解析を行う。まず、蛍光標識したmycolactone を用いて、反応する細胞の主体を明らかにする。また、次世代シークエンサーによるRNA-seq解析を行い、末梢神経障害に寄与する遺 伝子発現変化を明らかにする。 さらに、培養シュワン細胞・線維芽細胞・マクロファージにM. ulcerans subsp.shinshuense、M. ulcerans及び他の抗酸菌(M. marinum、M. avium等)を感染させ、細胞内への菌の取り込み、細胞形態の変化、細胞膜破損の有無、アポトーシスの有無などを検討する。これらの結果と、mycolactoneによる培養細胞の変化との比較を行うにより、シュワン細胞と他の細胞の細胞障害パターンの違いを明らかにする。
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Causes of Carryover |
2021年度は実験の遅れにより、細胞購入費用等の物品費が少なく計上されている。 また、コロナウイルス感染症の影響により、国内・海外渡航に制限が出ており、旅費も予定より少ない使用となっている。さらに、WHOでのブルーリ潰瘍年次総会等を含む国際学会が開催されなかったため、会議に参加し、実験結果について発表を行う予定がなくなり、計上していた海外渡航費用がそのまま使用せずに残っている。 2022年度は、2021年度で遅れている実験を進めるため、実験用細胞の購入や実験に使用する培地、ディスポーザブル器具等を購入するのに使用する。
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