2022 Fiscal Year Research-status Report
ブルーリ潰瘍(M.ulcerans感染症)における無痛性病態メカニズムの解明
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19K07557
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
後藤 正道 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80325779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 幸一 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (20206478)
圓 純一郎 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (30587879)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Mycolactone / 細胞傷害 / 無痛性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ブルーリ潰瘍におけるM. ulcerans subsp. shinshuense、M. ulcerans及びmycolactone A/B、mycolactone S1、mycolactone S2による細胞障害とその成立機序の検索及び受容体・シグナル伝達経路の同定により、ブルーリ潰瘍における無痛性及び有痛性病変成立のメカニズムを明らかにするものである。 2022年度はヒト単球由来のTHP-1細胞にレンチウイルスCRISPRライブラリーを遺伝子導入した後、mycolactone で処理を行い、生存細胞を回収し次世代シークエンサーを用いて、mycolactone の細胞死誘導に関与する遺伝子の探索を行った。候補遺伝子のノックアウトTHP-1細胞を作成し、mycolactone 処理による生存で評価した。さらにmycolactone が誘導するERストレスに関して、遺伝子発現解析を用いて解析した。これは研究協力者の川島晃氏によって「Genome-wide screening identified SEC61A1 as an essential factor for mycolactone-dependent apoptosis in human premonocytic THP-1 cells」としてPLOS NTDに投稿して受理された。 また、ハーバード大学岸義人教授から化学合成したmycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2の提供を受け、これらを培養神経細胞培地へ注入し効果判定を行った。また2011年に岸教授から提供されたA/Bを用いて同様の実験を行った。その結果、mycolactone A/Bに異なる性質が見られた。これについて検討したところ、新旧A/Bの溶媒に違いがあり、それによる毒性の違いが予測されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度はヒト単球由来のTHP-1細胞にレンチウイルスCRISPRライブラリーを遺伝子導入した後、mycolactone で処理を行い、生存細胞を回収し次世代シークエンサーを用いて、mycolactone の細胞死誘導に関与する遺伝子の探索を行った。候補遺伝子のノックアウトTHP-1細胞を作成し、mycolactone 処理による生存で評価した。さらにmycolactone が誘導するERストレスに関して、遺伝子発現解析を用いて解析した。 また、ハーバード大学岸義人教授から化学合成したmycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2の提供を受け、これらのmycolactoneを培養神経細胞培地へ注入し、効果判定を行った。さらに2011年に岸教授から提供され、残っていた少量のA/Bを用いて同様の実験を行った。その結果、同じ結果になるはずであるmycolactone A/Bに異なる性質が見られた。これについて検討したところ、mycolactone A/Bの溶媒の違いがあり、それによる毒性の違いが予測されている。この点について岸教授に再度mycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2の提供を求めていたが、2023年1月に岸教授が逝去しmycolactoneの供給が途絶えている。そのため、実験が中断している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、供給が途絶えているmycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2をWHOの協力を得て新たに入手して実験を行う。さらに、University of StrasbourgのDr. Nicolasが新規で合成mycolactoneの作成を始めており、そちらからも出来上がり次第提供していただくことになっている。この両者から提供されたmycolactone A/B 、mycolactone S1、mycolactone S2による細胞障害とその成立機序の検索もしくは、受容体・シグナル伝達経路を同定するために、Mycolactone により引き起こされる細胞動態の詳細な解析を行う。まず、蛍光標識したmycolactone を用いて、反応する細胞の主体を明らかにする。また、次世代シークエンサーによるRNA-seq解析を行い、末梢神経障害に寄与する遺伝子発現変化を明らかにする。 さらに、培養シュワン細胞・線維芽細胞・マクロファージにM. ulcerans subsp.shinshuense、M. ulcerans及び他の抗酸菌(M. marinum、M. avium等)を感染させ、細胞内への菌の取り込み、細胞形態の変化、細胞膜破損の有無、アポトーシスの有無などを検討する。これらの結果と、mycolactoneによる培養細胞の変化との比較を行うにより、シュワン細胞と他の細胞の細胞障害パターンの違いを明らかにする。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナウイルス感染症の影響により、国内・海外渡航に制限が出ており、旅費が予定より少ない使用となっている。さらに、WHOでのブルーリ潰瘍年次総会等を含む国際学会がハイブリッド開催となったため、計上していた海外渡航費用がそのまま使用せずに残っている。 2023年度は、2022年度で遅れている実験を進めるため、実験用細胞の購入や実験に使用する培地、ディスポーザブル器具等を購入するのに使用する。
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