2019 Fiscal Year Research-status Report
好中球細胞外小胞エクトソームの敗血症治療への応用を目指して
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19K07562
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
熊谷 由美 順天堂大学, 医学部, 助教 (90277591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
射場 敏明 順天堂大学, 医学部, 教授 (40193635)
長岡 功 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 好中球 / ectosome / 抗菌活性分子 / lactoferrin / CRAMP / FPR2 / CXCR2 |
Outline of Annual Research Achievements |
治療が困難で致死率の高い敗血症に対する治療法を探索するために、研究代表者らは、敗血症モデルマウスを用いた研究を行なってきた。その結果、ヒト抗菌ペプチドLL-37が、好中球からエクトソーム (ectosome) と呼ばれる細胞外小胞の放出を促進し、このectosomeが敗血症マウスの生存率向上に関与することを明らかにしてきた。また、ectosomeに抗菌活性があることもわかったので、2019年度は当初の予定通りに、ectosomeの抗菌活性に関わる好中球由来の抗菌活性分子の同定を試みた。その結果、lactoferrinおよびCRAMPと呼ばれるカテリシジンファミリーに属する抗菌タンパク/ペプチドを同定した。 また、ectosomeの敗血症治療への適応という観点からは、LL-37で好中球を刺激してもまだ十分量のectosomeが得られていないという課題がある。そこで、ectosome生成に関わる好中球のシグナル伝達機構を明らかにすることで、放出されるectosomeレベルをさらに向上させ、より効果的に敗血症の病態を改善することが可能ではないかと考えている。この目的を達成するための実験は2020年度以降に行なうことを予定していたが、当初の予定を少し早めて、2019年度はLL-37によるectosome放出に関わる好中球の受容体を同定しようと試みた。その結果、ホルミルペプチド受容体であるFPR2とケモカイン受容体であるCXCR2が、LL-37刺激によるectosome放出に関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PBSあるいはLL-37を投与した敗血症マウスの腹水からectosomeを単離し、マウス盲腸由来の大腸菌に対する抗菌作用を調べたところ、LL-37投与マウスから単離したectosome (LL-37_Ect) は、PBS投与マウス由来のectosome (PBS_Ect) よりも抗菌活性が高かった。またectosomeに含まれる好中球由来の抗菌活性分子 (lactoferrin、CRAMP、myeloperoxidase) をWestern blotting法により調べたところ、これら分子の量はいずれもPBS_EctよりもLL-37_Ectに多く含まれていた。さらに、lactoferrinやCRAMPの抗菌活性を中和する抗体によりectosomeの抗菌活性が阻害されたことから、ectosomeの抗菌活性には、少なくともlactoferrinやCRAMPが関与していることが明らかとなった。 研究代表者らの以前の研究から、LL-37は、マウス骨髄から単離した好中球を刺激してectosome放出を促進することがわかっていた。またLL-37は、P2X7 (ATP受容体)、FPR2 (ホルミルペプチド受容体)、CXCR2 (ケモカイン受容体) を介して免疫担当細胞に作用することが知られている。そこで、これらの受容体がLL-37によるectosomeの放出促進にも関与するかどうかをこれら受容体に対するantagonistを用いて調べた。その結果、FPR2あるいはCXCR2に対するantagonistをLL-37と共存させると、LL-37のみで刺激した時に比べてectosomeの放出レベルが減少したことから、FPR2とCXCR2が関与していることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
LL-37によるectosome放出促進において、FPR2およびCXCR2が関与していることが明らかとなったので、今後はこれら受容体の下流のシグナル伝達経路について調べる予定である。FPR2とCXCR2はいずれもGタンパク質と共役している受容体であるので、Gタンパク質を介したシグナル伝達経路が関わっていると考えられる。さらに、Ca2+ シグナルやkinase等の関与についても、Ca2+キレート剤や各種阻害剤を用いて調べる。このようにして得られた情報をもとにして、今後は、Ca2+イオノフォアーや各種シグナル伝達促進物質を好中球に作用させた時にectosome放出が増強されるかどうか、またその時に放出されたectosomeを敗血症マウスに投与したときに、症状軽減が見られるかどうか検討する予定である。
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Causes of Carryover |
予想以上に研究が上手く行ったので、使用した動物も予想より少なくて済んだことと、研究分担者が分担金を使用しなかったため。残った金額は来年度の分担者による研究推進とともに、実験動物や必要な試薬の購入に当てる。
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