2020 Fiscal Year Research-status Report
好中球細胞外小胞エクトソームの敗血症治療への応用を目指して
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19K07562
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
熊谷 由美 順天堂大学, 医学部, 助教 (90277591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
射場 敏明 順天堂大学, 医学部, 教授 (40193635)
長岡 功 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生体防御ペプチドLL-37 / マイクロベシクル / Ca2+シグナリング / カルパイン / 抗菌活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
好中球を生体防御ペプチドLL-37で刺激すると、マイクロベシクルという大きさが200-1000 nmほどの細胞外小胞が放出される。2020年度はこのマイクロベシクル放出に関係する好中球内のシグナル伝達経路の解析を行なった。まず、好中球を細胞外Ca2+キレーターEGTAの存在下で、あるいは細胞内Ca2+のキレーターBAPTA-AMで前処理した後にLL-37を作用させると、マイクロベシクルの放出量が減少した。一方でCa2+ ionophoreをLL-37と共に作用させるとsynergisticに放出量が上昇することから、LL-37によるマイクロベシクル放出にはCa2+シグナリングが関係することが明らかとなった。さらに、Ca2+依存性のタンパク質分解酵素カルパインは、細胞膜裏打ち構造のCortactinを分解することによって、膜を不安定化させマイクロベシクル放出を促進することが知られている。LL-37によるマイクロベシクル放出は、カルパイン阻害剤により減少することから、この過程にはCa2+-カルパイン経路が関与することが示唆された。我々は以前、LL-37刺激により放出されたマイクロベシクルには抗菌活性があることを示したが、今回、Ca2+ ionophoreとLL-37の共刺激により放出されたマイクロベシクル (Ca37-MV)は、LL-37単独刺激時のマイクロベシクル (37MV) に比べて、さらに抗菌活性が上昇していることも示された。このCa37-MVを敗血症マウスに投与すると、37MVを投与した時に比べてマウス体内の生菌数の減少、および早い体重回復が見られたが、予想に反して敗血症マウスのさらなる生存率向上には大きく寄与しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウィルスのまん延により、研究活動にも大きな影響があった。特に必要な週齢のマウスが入手しにくいこともあったり、大学のカリキュラムの変更等により、研究時間が削られたこともあった。しかし勤務時間を多くしたりなど、かなり負荷を増やして研究を行なった結果、ほぼ予定通りの成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
LL-37は好中球のケモカインレセプターであるCXCR2、およびformyl peptide receptor 2 (FPR2)を介してマイクロベシクルの放出を誘導することがこれまでの研究により明らかとなっている。2020年度の結果により、この過程にはCa2+-カルパイン経路が関与することが示されたので、今後はこれらレセプターとCa2+-カルパイン経路をつなぐ分子を明らかにする予定である。 また敗血症マウスにLL-37を投与すると、マイクロベシクル以外にもエクソソームの体内分泌が向上することがこれまでの研究から明らかになっている。今後はエクソソームの機能も明らかにするために、エクソソームが含有する分子(タンパク質やsmall RNAなど)の解析も行なっていく予定である。
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Causes of Carryover |
実験が予定よりスムーズに行ったため、2020年度に使用する予定であった金額すべてを使用しなくても、上記のようにほぼ予定通りの成果を得ることが出来た。2021年度は上記の研究計画を推進するために、請求した助成金を用いてマウスや試薬等を購入するなど有効利用して、研究を続行する予定である、
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