2021 Fiscal Year Research-status Report
嫌気性菌Bifidobacterium属細菌のO2感受性メカニズムの解明
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19K07564
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
川崎 信治 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (50339090)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 嫌気性菌 / ビフィズス菌 / クロストリジウム菌 / 乳酸菌 / 活性酸素 / O2感受性 / O2耐性 / H2O2 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は嫌気性菌のO2感受性機構の解明を目的として、絶対嫌気性菌のクロストリジウム菌や嫌気性菌のビフィズス菌、酸素感受性の乳酸菌を用いて研究を行っている。ビフィズス菌は乳児腸内菌叢の優占種であり、高いプロバイオティクス効果を持つ。健康や医療分野での利用が期待されるが、高いO2感受性をもつが故に産業利用が困難である。これまでに高いプロバイオティクス活性を持つ乳児由来のビフィズス菌:Bifidobacterium infantisが低濃度のO2下で生育が著しく阻害されることを見いだし、本菌株からO2感受性の原因となる活性酸素H2O2を生成する酵素を同定した。また本酵素をコードする遺伝子をO2耐性株のB. minimumに導入したところ、B. minimumがO2感受性に変化した。本結果から、1つの酵素反応がビフィズス菌のO2感受性を左右する可能性を推定し、現在研究を進めている。現在までにO2に高い感受性を示すビフィズス菌のO2感受性に関与する原因酵素の同定を行った。O2高感受性株:B. infantis に加え、主に成人腸内に生息するB. adolescentisも高いO2感受性を示すことを見いだした。B. adolescentisのO2に対する生育挙動と、H2O2生成酵素のタンパク科学的諸性質の解析を行った結果、本酵素がO2に対して高い親和性を持つこと、B. infantisと同様の機構にてH2O2生産に関与する原因酵素として機能しうる可能性が推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、O2に高い感受性を示すビフィズス菌のO2感受性に関与する原因酵素の同定を目的として研究を行った。申請者はB. infantisについて得られた研究成果を基に、B. adolescentisを用いて、B. infantis にて得られた知見の共通性と多様性に関する調査を行った。B. adolescentisのH2O2生成酵素の存在を同定し、本酵素のタンパク科学的諸性質の解析を行った。本酵素のO2に対する親和性から生体内でH2O2生成酵素として機能しうることが判明した。また自然界由来の様々なサンプルからO2感受性を示す株の単離・同定を行い、これらのO2感受性機構に関して比較解析を行ったところ、類似した機構の存在が推定された。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度はB. adolescentisのH2O2生産酵素について得られた知見を基に、国際誌への発表を行う方針である。また遺伝子欠損変異株の作出を試みている。B. infantisでは成功しており、B. adolescentisでも成功すれば、酵素の機能性とO2感受性への関与の証明が可能になる。最終的に研究成果を統合して、O2に高い感受性を示すが故に産業上で未利用の有用菌種の育種開発に貢献することを目標とする。
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Causes of Carryover |
研究計画は比較的順調に進んでいるが、新型コロナウイルスの影響で予定していた国際学会や論文投稿に遅れが生じ、使用予定額に変更が生じた。未達成の目標は最終年度に達成する方針である。
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