2021 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルスのゲノムに由来するsmall RNAの生成メカニズムと機能
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19K07576
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
古瀬 祐気 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (50740940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インフルエンザ / ゲノム / 機能性RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザの病態を理解するためには、インフルエンザウイルスの増殖機構や宿主細胞との相互作用を解明することが重要である。そのためには、ウイルスゲノム上にコードされるタンパク質だけではなくゲノム上の塩基配列に由来する機能性RNAの理解が必須である。インフルエンザウイルスのゲノムから新規のsmall RNAが産生されることが近年になって明らかになり、本研究課題においてそれが産生されるメカニズムやウイルスの生活環に与える影響などを解析している。 令和3年度は、前年度までに得られた実験データをもとに、Inosine, 5-methylcytosine, N6-methyladenosine, N1-methyladenosine, Pseudouridine, N4-acetylcytidine, 7-methylguanosineといったRNA化学修飾がsmall RNAに関わるウイルスゲノム領域に存在するかの探索を行った。ウイルス感染細胞から抽出したウイルスゲノムを断片化し、RNA修飾に特異的な抗体を用いて免疫沈降に供したのちに次世代シーケンス解析を行い、沈降実験によって濃縮されたRNA領域を同定した。結果として、Inosine、Pseudouridine、N1-methyladenosine、N4-acetylcytidineがネガティブセンスであるインフルエンザウイルスのRNAゲノムに存在していることを発見した。さらにこれらのRNA修飾に関わる宿主因子はウイルス感染によって発現量が変化しており、逆にこれらの宿主因子を欠損させるとウイルス増殖が負に制御されることから、RNA修飾がウイルスの生活環に深く関わっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度までに行った実験データをもとに解析を進め、インフルエンザウイルスのゲノムRNAに化学修飾が存在していることを示すことができた。さらに、それらが生理的な機能を担っていることを示唆する知見も得られており、インフルエンザウイルスのゲノムが持つ全く新しい機能の発見につながりうる成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫沈降以外の実験を行うことで、ウイルスゲノム上のRNA化学修飾の存在を多角的に証明していく。また、その修飾を人工的に制御することでウイルスの増殖や病原性に変化が起こるのかを検討していく。
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Causes of Carryover |
今年度に生物学的実験のための試薬や消耗品を購入予定であったが、前年度までに購入した試薬や物品の残分で実験を遂行することができた。また、いくつかの実験は次年度以降に行うように計画を変更したために、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、あらためて実験消耗品、受託解析、成果発表などに用いる予定である。
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