2020 Fiscal Year Research-status Report
EBVテグメントタンパク質による不完全溶解感染の制御
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19K07580
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
村田 貴之 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30470165)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | EBV / B細胞 / 感染直後 / PD-L1 / EBNA2 |
Outline of Annual Research Achievements |
Epstein-Barr virus(EBV)は、潜伏感染と溶解感染という2つの潜伏様式をとる。両様式の中間的平衡状態にあたる不完全溶解感染という状態(abortive lytic state)が、効率のよい感染の成立やがん化に重要であることを示唆する知見が出てきているが、現在までほとんど解明されていない。そこで本研究では、特にEBV感染直後に生じるこの現象に着目し、この状態で発現する遺伝子やエピジェネティックスをオミクス解析により経時的に詳しく観察して解明することを目的としている。EBV基礎研究では通常よく細胞株を使用するが、今回はより自然な条件での感染を目標に、健常人の初代B細胞を分離して感染実験に用いた。トランスクリプトーム解析により、感染直後から宿主細胞のPD-L1遺伝子が発現誘導されることを新規に見いだした。組換えウイルスを用いた解析や阻害剤実験等を行った結果、このPD-L1遺伝子の発現誘導は、テグメント遺伝子ではなく、ウイルスがコードする転写コファクターであるEBNA2によって起こっていることが明らかになった。、ChIP-seq解析、ChIA-PET解析、レポーターアッセイの結果から、EBNA2はPD-L1転写開始部位近傍および転写開始部位から130kb下流にある2つのエンハンサーに結合してPD-L1の転写を増強していることが明らかとなった。以上より、EBVは生体内でB細胞に感染すると、感染直後からEBNA2を介してPD-L1の発現を増強し、細胞障害性T細胞(CTL)等による免疫から回避していることが明らかになった。ウイルス感染細胞が免疫を回避することはがん化にとって非常に重要なプロセスであり、本研究ではEBVによるB細胞がん化のプロセスの一端を解明できたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス流行により、研究試薬、資材が品薄となったり、在宅勤務が推奨されたりしたため、一時研究が遅れ気味ではあったが、年度末までに「EBNA2によるB細胞感染直後のPD-L1の発現増強」の論文をVirology誌にpublishすることができた。当初の予想では、潜伏感染と溶解感染の中間的平衡状態にあたる不完全溶解感染という状態(abortive lytic state)でよく発現されるとされ、転写に関与することが明らかになっている溶解感染遺伝子である、BGLF2やBKRF4(Konishi et al., 2018; Masud et al., 2017)などのテグメント遺伝子の影響が考えられたが、予想に反してEBNA2遺伝子がPD-L1増強を誘導していた。その点、予想とは異なっていたが、研究は当初の計画通りに進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は特にPD-L1に着目して研究を進めたが、他にもEBV感染直後に不完全溶解感染という状態(abortive lytic state)で見られる、独特の遺伝子発現やエピゲノムの変化を観察している。今後は、そのようなPD-L1以外の変化について、詳細な解析を進めていきたい。特に遺伝子発現変化については、すでにPD-L1の研究でおおよその手法を確立しているので、ゼロから始めるよりは効率よく研究を進めることができるだろう。
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Causes of Carryover |
次年度消耗品費として使用するため。
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Research Products
(2 results)