2023 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞に特異的なエンテロウイルス71新規受容体の同定と機能解析
Project/Area Number |
19K07585
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
西村 順裕 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (00392316)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ウイルス / 受容体 / 手足口病 / エンテロウイルス71 / 中枢神経 / 神経細胞 / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、神経細胞に特異的なエンテロウイルス71(EV71)受容体が存在すると仮定し、これを同定することである。一方で、EV71の細胞表面の受容体として報告されたSCARB2は中枢神経にも発現しており、本研究の仮定との矛盾が生じうる。そこで本年度は、SCARB2の細胞での発現部位について解析した。 まず、SCARB2の細胞表面での発現をフローサイトメトリーで検討した。EV71が効率よく増殖する培養細胞(RD細胞など)を用いたが、既報と異なり、SCARB2は細胞表面に検出されなかった。一方、細胞内のSCARB2はウェスタンで検出できた。次にSCARB2の細胞内局在をコンフォーカル顕微鏡で検討した。SCARB2はリソソームや後期エンドソームに局在しており、細胞膜への局在はみられなかった。これらの結果と一致し、抗SCARB2抗体はRD細胞へのEV71感染を阻害しなかった。SCARB2をノックアウトしたRD細胞においても、細胞へのEV71結合量は低下しなかった。しかし、EV71増殖は大きく低下した。したがって、SCARB2はEV71の感染成立に必須な細胞内分子ではあるが、EV71の細胞への結合には関与しないと考えられた。ヒト初代培養細胞においてもEV71 は効率よく増殖したが、増殖は抗SCARB2抗体によって阻害さなかった。ヒト初代培養細胞でのSCARB2発現は細胞内のみで、細胞表面には検出されなかった。 以上のように、SCARB2は細胞表面には存在せず、細胞内受容体としてEV71感染に関与することを明らかにした。中枢神経への感染においても、EV71はSCARB2以外の受容体に結合して細胞侵入を開始し、細胞内でSCARB2に出会うと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
未知受容体の同定に向け計画していた実験が計画通りに進行しなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
初代神経細胞を用いてのエンテロウイルス71感染性の解析、新規受容体の機能解析を検討している。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが、令和6年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和5年度分についてはほぼ使用済みである。
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