2020 Fiscal Year Research-status Report
抗ウイルス性ストレス顆粒形成による自然免疫応答シグナル制御機構の解明
Project/Area Number |
19K07589
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
尾野本 浩司 千葉大学, 真菌医学研究センター, 助教 (10612202)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ウイルス / ストレス応答 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、ウイルス感染時に細胞内に形成される抗ウイルスストレス顆粒(antiviral stress granule:avSG)と呼ばれる凝集体の生理的機能の解析及びavSG内に局在する新規の抗ウイルス自然免疫応答制御分子を同定することを目的としている。 これまでに申請者は、細胞質内ウイルスRNAセンサーであるRIG-I, MDA5, LGP2の3分子からなるRIG-I-like receptor (RLR)によるウイルスRNA検知とI及びIII型Interferon (IFN)を中心とした抗ウイルス免疫応答が紫外線などの環境ストレスやウイルスや細菌などの病原体による感染ストレスに対する適応機構の1つであるストレス顆粒 (SG)と呼ばれる細胞内凝集体により空間的に制御されていることを明らかにしている。しかし、SGは 細胞質内で一過的に形成される凝集体であり、その形成因子及び詳しい生理的機能についてはよく分かっていない。 そこで、本年度は主に昨年度までに同定した標的候補分子の機能解析を行い、avSG内に局在する分子の幾つかがRLRを介した抗ウイルス自然免疫応答に関与していることを示唆する結果を得た。さらに、その標的候補分子の1つで抗ウイルス自然免疫応答を正に制御する遺伝子のKOマウスを作製し生体内における生理機能解析を行った。その結果、標的遺伝子のKOマウスではウイルス感染時の生存率がWTと比較し著しく低下することが明らかとなった。また、並行して培養細胞を用いた実験系によりavSG形成制御に関わる分子の機能解析を行い、その標的分子を過剰発現させた細胞ではウイルス感染時にavSGが形成されず、それに伴うIFN産生が減弱することが明らかになった。現在はこれら標的分子の詳細な機能解析を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従い、avSG形成及び抗ウイルス自然免疫応答に関与する新規制御分子のスクリーニングを行いavSGと共局在し抗ウイルス自然免疫応答を制御する候補分子を複数同定した。現在、これら標的候補分子の発現ベクター及びKO細胞を用いた分子メカニズムの解析を行っている。さらにin vitroの解析により抗ウイルス応答への関与が明らかとなった標的分子の1つに対してはCRISPR/Cas9により作製したKOマウスを用いてウイルス感染実験を行いKOマウスでは生存率が著しく低下することを明らかにし、現在は生体内における詳細な生理機能の解析を進めている。 以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、作製した標的分子のKOマウスに種々のRNAウイルスを感染させ、その際のマウスの生存率及び血清中のIFNや炎症性サイトカインの産生量などを解析し、生体内における機能解析を推し進める。また新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のin vitroでの実験系を構築し培養細胞を用いた感染実験を開始しており、これまでに同定した標的候補分子のSARS-CoV-2感染時における機能についても検討を加える予定である。一方で、新たな標的候補分子の同定も引き続き行い、培養細胞レベルで抗ウイルス免疫応答への関与が示唆された分子に対しては同様にKOマウスの作製に着手し、avSGを介した抗ウイルス免疫応答の制御機構の解明を行う。
|
Research Products
(4 results)