2021 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスマイクロRNAに特有の代謝生理を利用した新規診断治療法およびDDSの開発
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19K07600
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
片野 晴隆 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (70321867)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウイルス / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAウイルスがコードするノンコーディングRNAにはさまざまなタイプのRNAがあり、microRNA (miRNA)は20-22merのヌクレオチドからなる最も短いノンコーディングRNAである。これまでにわれわれはJCポリオーマウイルスやエプスタインバーウイルス、ヒトヘルペスウイルス8がコードするmiRNAの各病変部における発現プロファイルを明らかにし、また、病理組織切片上で、ウイルスmiRNAの発現を検出する系を確立し、その発現と局在を明らかにしてきた。昨年度には複製能の高いJCポリオーマウイルス株の遺伝子をCos7細胞に遺伝子導入することで、効率の高いウイルスの複製、および、ウイルスmiRNAが高発現する系を立ち上げているが、今年度はこれらの実験系において、mRNAの発現とともに、miRNA含むウイルスノンコーディングRNAの発現を次世代シークエンスを用いて検索した。結果、JCポリオーマウイルスのこれまで報告のない、環状 RNAの候補となる遺伝子配列を同定するに至った。さらに、カポジ肉腫など、ヒトヘルペスウイルス8感染症の病変部で最も高発現しているmiR-K3遺伝子について、その機能を明らかにする目的で、発現レンチウイルスを用い、ヒトリンパ腫細胞株にmiRK3を強制発現させた。この細胞からRNAを抽出し、RNAseqでヒトmRNAの発現を網羅的に検索し、miRK3によって発現が変動する遺伝子のプロファイルを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に確立したウイルスの複製効率の高い実験系を利用することで、あらたなノンコーディングRNAの配列の同定が可能となった。miRNAのみならず、circular RNAなどの他のノンコーディングRNAの知見が得られたことは、予想外の成果といえる。ヒトヘルペスウイルス8のmiRNAの機能解析においても、RNAseqでの結果は今後の機能解析において、重要な知見を提示している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかになった、ヒトヘルペスウイルス8のコードするmiRK3の導入により細胞内で変化があったカスケードを中心に、感染細胞におけるmiRNAの生物学的機能を調査する。感染細胞におけるウイルスmiRNAの発現機構について、プロモーターの解析とともに、発現に関与する宿主側因子を同定する。また、ウイルスがコードするノンコーディングRNAが細胞外小胞であるエクソソームに移行するかどうかを観察し、その代謝とエクソソームへの移行するメカニズムを明らかにすることで、エクソソーム中のノンコーディングRNAを用いたDDSの開発に結びつけてゆく。
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Causes of Carryover |
JCポリオーマウイルスやヒトヘルペスウイルス8の次世代シークエンスを用いたRNAの解析結果などから、予定していたことよりも新しい知見、成果が得られ、これらを確認するための追加実験等が必要であったために、今年度計画していた一部の実験が翌年度に持ち越された。翌年度にこれらの実験を行い、その費用を使用する。
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