2020 Fiscal Year Research-status Report
皮膚所属リンパ節における抗原捕捉部位の違いがアレルゲン性に及ぼす影響の解明
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19K07603
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
竹内 新 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00360579)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リンパ節 / 免疫監視 / ストローマ細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
経皮的に侵入した抗原が予想以上にアレルギーの発症と深く関わっていることが明らかとなってきているが、発症に至るメカニズムは依然として不明な点が多い。本研究では皮膚所属リンパ節の内部に注目し、流入する抗原がリンパ節内に取り込まれる場所やリンパ球の活性化が誘導される場所とアレルギー発症との関係を明らかにすることを目的としている。特に免疫原性の高い抗原はリンパ節の髄質域に蓄積し易く、その近傍にはB細胞の集積を認める固有の微小環境(深皮質辺縁部:DCP)が形成されていることに注目している。この領域独自の免疫監視システムとアレルギー発症との関わりを解明しようと試みている。 本年度は主にリンパ節に流れ込む抗原について解析を行った。抗原の免疫原性は、一般的に分子の大きさや複雑性、潜在的なエピトープの多様性が増すほど大きくなると考えられている。今回は、より免疫原性が高いと予想される抗原として、細菌類とほぼ同等の大きさであるオボアルブミン-卵白リゾチーム複合体を調製して解析に用いた。このタンパク質複合体を抗原として皮下に投与したところ、数時間後には所属リンパ節への到達が確認された。流入した抗原の大部分はリンパ節の辺縁洞を経て、髄洞との境界周辺に蓄積しており、多くはこの場所に存在する髄洞マクロファージによって捕らえられていた。オボアルブミンの単体を投与した場合には髄洞の深部まで到達しやすく、抗原の状態によって蓄積する場所に違いがあることも分かった。また、辺縁洞と髄洞の境界に蓄積した抗原のうちの一部が近傍に存在するDCP領域に取り込まれている様子も確認された。CD11c-vinusトランスジェニックマウスを使用した解析から、この抗原の取り込みはDCP領域に存在するCD11c陽性の樹状細胞によって行われている事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度にリンパ節深部におけるB細胞の動態について明らかにしたのに続き、今年度はリンパ節に到達した抗原の流れについて詳細に解析する事ができた。これまでの報告ではリンパ節の皮質側における抗原の取り込みについて焦点が当てられていたが、髄質側にはリンパ液中に存在する抗原を濃縮し、リンパ節内へ取り込むシステムが存在している事が明らかとなった。この領域には免疫原性の高い抗原が捕獲され易いと予想される。これまでに得られた結果を総合的に考えてもDCP領域が免疫監視を行う特別な微小環境を備えている可能性がさらに強くなった。計画はほぼ予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
樹状細胞によってリンパ節内に取り込まれた抗原をDCPに存在するB細胞が直接認識できるかを確認するため、卵白リゾチーム特異的なBCRトランスジェニックマウスのB細胞を用いて、活性化誘導が認められるのかを確認する。また、投与した抗原の状態によって抗原特異的抗体の産生量、親和性などに違いが見られるのか、様々な状態のオボアルブミンを投与して特異的抗体の検出、比較を行う。
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Causes of Carryover |
次年度より研究代表者の異動が決まり、異動先で新に実験環境を整える必要があるため、予定より物品類の購入が多くなる事が予想され、費用の一部を次年度に使用することにした。 また、次年度も新潟大学で飼育しているマウスを引き続き使用する予定であり、その飼育に必要な維持費も確保した。
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