2020 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチン修飾によるメモリーT細胞疲弊・老化制御機構の解明
Project/Area Number |
19K07629
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安藝 大輔 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50420500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CD4 T細胞 / 疲弊 / 免疫老化 / ユビキチン |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢による個体レベルでの免疫の機能的変化、いわゆる「免疫老化」は、易感染、自己免疫疾患や発がんなどと密接に関わっている。免疫老化は主に、加齢に伴い増加するメモリーCD4陽性T細胞(Senescence-related T cell:Tsen)による獲得免疫能の異常と考えられているが、Tsenの発生機序に関する分子メカニズムはほとんど解明されていない。本研究では、Tsen形質の獲得に関わるユビキチン連結酵素や脱ユビキチン化酵素の同定を通じて、タンパク質のユビキチン修飾系によるTsen誘導制御機構を明らかにする。本年度は、前年度に構築したユビキチン修飾関連分子のcDNA発現ライブラリーを用いてin vivoにおけるスクリーニングを実施した。ライブラリーを導入したナイーブCD4陽性T細胞をセルソーターにて分取した後、RAG2遺伝子欠損マウスへ移入した。細胞移入後14日目にレシピエントマウスの脾臓及び肺より細胞を単離し、移入細胞をフローサイトメーターにて解析した。移入細胞は恒常性増殖に伴ってTsen形質を獲得していたが、PIAS1が導入された細胞はコントロール細胞と比較して、抑制性受容体の顕著な発現増加を示した。PIAS1導入細胞では移入後の恒常性増殖の抑制が観察された。これらに加え、細胞傷害性T細胞のマーカーであるKLRG1について解析したところ、その陽性率はPIAS1導入細胞で増加していた。さらにTsen誘導におけるPIAS1の効果を検討するため、脾臓より単離した移入細胞における遺伝子発現解析を実施した。その結果、PIAS1導入細胞ではIL-2の発現が低下していた。またメモリーT細胞の形成に重要なTCF7の発現もPIAS1の導入により抑制されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに構築した恒常性増殖を誘導するin vivoスクリーニング系とcDNA発現ライブラリーに基づき、Tsen発生に関与するユビキチン修飾関連分子を探索した。その結果、候補分子としてPIAS1を同定することが出来た。PIAS1を高発現する移入細胞の解析より、PIAS1は細胞の疲弊及び細胞傷害性を誘導し、Tsen形質獲得の促進に関与する分子であることを示唆する結果が得られた。したがって、現在までのところ、本研究は当初の計画通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、PIAS1を介したTsen誘導効果について、TCR刺激に対する応答性や炎症性素因の誘導などを指標にin vitro及びin vivoの解析を通して明らかにする。さらに、活性化T細胞におけるPIAS1の阻害がTsen化に及ぼす影響を検討する予定である。
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Research Products
(1 results)