2019 Fiscal Year Research-status Report
急性骨髄性白血病の発症と維持における転写因子Bach2の機能解明
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19K07630
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 亜里 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (90749772)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / AML / Bach2 / T細胞 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性骨髄性白血病(AML)は、主に顆粒球やマクロファージなどのミエロイド系の前駆細胞が分化できずに増殖し続ける病気で、細胞の分化や増殖を調節する転写因子の機能変化によっても引き起こされる。C/EBPalphaは、幹細胞や前駆細胞の顆粒球分化に必須の転写因子で、その変異は、AMLの発症の一因である。Bach2は、ミエロイド分化を抑制することでリンパ球分化を促進する転写抑制因子である。C/EBPファミリーとBach2は、同一の標的遺伝子の発現を逆方向に調節し、ミエロイド系とリンパ球系の分化を調節している。申請者は、マウスの多能性前駆細胞で、Bach2が過剰に働くとc-kit陽性の未熟な細胞分画の増殖促進と、ミエロイド分化の抑制が生じることを見出した(未発表)。そこで、本研究では、BACH2がAMLの発症と維持に関わる可能性をヒト化マウスの実験系で解析することを目的とした。転写因子Bach2は、血球系統分化、B細胞およびT細胞の最終分化及び機能調節など様々な機能が報告されているが、ヒトの細胞で機能を解析した報告はほとんどない。そこでまず、Bach2のT細胞において報告されている機能がヒトでも保存されているか明らかにする実験を行った。臍帯血から分取したヒトT細胞をCD3/CD28ビーズで活性化した。その後、BACH2遺伝子をCRISPR-Cas9システムで欠損させ、細胞傷害顆粒や各種サイトカインのタンパク質量をフローサイトメーターで解析した。その結果、すでにBach2の標的と報告のあるIFN-gammaや、まだ標的と報告されていない、いくつかの細胞傷害顆粒の発現が上昇した。これらの結果は、マウスで見られるBach2の機能が、ヒトでも保存されている可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の目標であった、Bach2のヒトでの機能の保存性について有効なデータが得られたため概ね順調に進展している。次年度はBach2のAMLでの機能について明らかにしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
Bach2のT細胞での機能は保存されていることがわかったが、ミエロイド分化の抑制機構に関しては未検証である。そこで、ヒトHSCでBACH2遺伝子を欠損、もしくは上昇させ、分化の方向性の解析を行う。同時にAMLでの機能を明らかにするため、特にCEBPalphaの変異のあるAMLを選定し、BACH2の量を調整することで、増殖や生存に変化があるか解析を行っていく。
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