2020 Fiscal Year Research-status Report
免疫細胞上の機能分子の「着せかえ」による細胞動態の制御と癌の新規治療法の開発
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19K07634
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 甲雄 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (90609497)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トロゴサイトーシス / インテグリン / 癌免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、標的免疫細胞に自在に機能分子を付与、あるいは剥奪させることにより、自己免疫疾患や癌の収束に必要な細胞を動員する、または、治療の妨げになる免疫細胞を移出させることによる新しい免疫療法を確立することを目的として、研究を開始した。そのために、T細胞の抗原認識の際に形成される免疫シナプス の構成分子群に着目した。その中でも細胞間接着に関わるインテグリンLFA-1(αLβ2)は、抗原認識やケモカイン刺激などoutside-in シグナルにより比較的容易 に活性化誘導できることから、トロゴサイトーシスにおけるLFA-1活性化の役割について検討を行った。 前年度はトリ卵白アルブミン(OVA)323-339ペプチド特異的TCRトランスジェニック(OT-II)マウスから得たCD4 T細胞を用いて、抗原刺激依存的にトロゴサイトーシスによる膜分子移動が誘導することができ、これはLFA-1依存的であることを示した。そこで、今年度は、標的免疫細胞におけるトロゴサイトーシスを誘導するため、インテグリン活性化誘導によってトロゴサイトーシスが亢進できるかを検討した。その結果、CD98を抗体によって架橋することによって、LFA-1活性化が誘導でき、抗原依存的トロゴサイトーシスが増強することが分かった。また、病態におけるこのCD98の寄与を検討するために、マウス悪性黒色腫B16F10の背部皮下接種モデルにより形成された原発巣から得られた腫瘍浸潤細胞では、CD8 T細胞で特に発現亢進していることが分かった。これは、癌微小環境においてCD8 T細胞がCD98の発現が亢進することによって、トロゴサイトーシスが誘導されている可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、細胞特異的なインテグリンの活性化を誘導することによるトロゴサイトーシスのコントロールを目標としていたが、入手可能な抗体が限られていたため、実験系の構築に時間がかかってしまった。また、過去の報告に基づいて、ゲノム編集技術を用いた遺伝子改変により、インテグリンα鎖の細胞内領域欠損による恒常的にLFA-1活性化しているOT-IIマウスを作成することを計画していたが、このマウスの作成にも時間がかかってしまい、解析が次年度にまわってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
癌微小環境において腫瘍浸潤CD8 T細胞が特にCD98の発現が亢進していた。このため、今回用いたB16F10細胞の背部皮下接種モデルは、標的細胞特異的なトロゴサイトーシス誘導に使用できる可能性が期待される。今後は、1) 癌微小環境におけるトロゴサイトーシスが誘導されているか、 2)癌微小環境で起こったトロゴサイトーシスが腫瘍進展に対してどのような影響を及ぼすか、 3) CD98の発現・機能調節により腫瘍CD8T細胞のトロゴサイトーシスをコントロールし、腫瘍進展を抑制することができるか を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度の特に前半は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、通常の研究活動が大きく制限される状況となった。また、研究活動の制限解除後においても試薬類の不足によって研究に支障ができてしまったため、経費を当初の見込み通りに使用していくことができなかった。今年度は、CD98に対する抗体の作製と、樹立した恒常的LFA-1活性化マウスを使用した解析を進めていき、年度内の論文投稿・受理までを目標とする。
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